<高校野球栃木大会:作新学院3-1宇都宮工>◇29日◇決勝◇栃木県総合運動公園野球場

 作新学院に、ロンドンからの勇気が届いた。1点を追う6回表2死二、三塁、羽石裕紀外野手(3年)が代打にコールされた。勝負を分ける場面だが、羽石は落ち着いていた。前日の自主練習で2死二、三塁を想定して素振りを繰り返していた。まったく同じ場面で打席が巡り「おかげで焦ることなく入れた」。宇都宮工の150キロ右腕・星知弥投手(3年)の直球を振り抜くと打球は右中間を抜く三塁打。走者2人がかえり逆転した。

 羽石は「気持ちで負けないように振った」と執念を強調した。この日、寮の朝食時に、同校3年の萩野公介がロンドン五輪男子400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得したというニュースを耳にした。羽石は言う。「身近な人も頑張っているので、自分たちもと思った。あっちは世界で、場所は違うけどやることは同じですから」。仲間の快挙に、甲子園にかける思い、勝負への執念がいっそう高まった。

 代打策が的中した小針崇宏監督(29)は「勝負どころは羽石と決めていた」という。「いつもバットを持って、見えないところで努力してきたから」。センバツでは背番号7でスタメン出場した羽石だが、右肩故障の影響もあり今大会は15番。守備につけないが代打の切り札としてメンバーに入った。「守備もやりたいが今は1打席で勝負する」。その思いが土壇場で実った。

 甲子園は3季連続、夏は2年連続8度目の出場となる。石井一成主将(3年)は「昨年は先輩に連れて行ってもらったが、今年はボクたちで戦いたい」と意気込む。萩野の銅メダルに負けじと、甲子園で金メダルを狙う。【細江純平】

 ◆作新学院

 1885年(明18)創立の私立校。生徒数は3808人(うち女子1590人)。野球部は1902年に創部で部員は95人。甲子園出場は春に9度、夏は8度目。主なOBは元巨人江川卓、ロッテ岡田幸文。所在地は栃木県宇都宮市一の沢1の1の41。長谷川勝比古校長。◆Vへの足跡◆2回戦8-0黒磯南3回戦16-1益子芳星4回戦3-2宇都宮準々決勝8-1足利工準決勝7-0文星芸大付決勝3-1宇都宮工