<高校野球岐阜国体:桐光学園1-0倉敷商>◇9月30日◇1回戦◇岐阜・長良川球場

 奪三振記録で夏の甲子園を沸かせた桐光学園(神奈川)・松井裕樹投手(2年)が、来夏に向けて球数減に挑戦した。倉敷商戦で12三振を奪い5安打無四球完封。既に来春センバツ出場は絶望的だが、連投が避けられない夏へ向けて球数減は必須の課題。接戦で最終的に130球を投げたが、6回までは75球と省エネ投法で新境地を切り開いた。

 松井は序盤、トレードマークの三振をあえて控えめにした。直球の最速146キロと球は走ったが「打たせて取ろうと。試合が続くので、なるべく球数を減らしていけたら」。バットの芯をずらすツーシームを多投し、6回までは5奪三振。1回平均12・5球で、8個の内野ゴロを量産した。

 制球も安定していた。今夏の神奈川大会以降では14試合目にして初の無四球。宇川一光捕手(3年)は「皆さんは松井がたくさん三振を取ることを期待するでしょうが、勝つためには打たせないと」と、ボール球を振らせるのではなく、ストライクゾーンで勝負した配球の意図を説明した。

 夏の甲子園での松井は、4試合で577球を投げ、1回平均16・0球と球数がかさんだ。猛暑の中での連投。疲労がピークに来た準々決勝(対光星学院)では、154球を投げ3失点で敗退した。センバツこそ絶望的だが、来夏こそ頂点に立つため、連戦に備えた新スタイルに早々と取り組み始めた。野呂雅之監督(51)からも「前半飛ばしすぎず、後半余力を残すように」という指示をコーチを通じて受けていた。

 7回以降の松井は、奪三振マシンに戻った。2回に1点を奪ったが、その後は0行進。6回裏に味方打線が連続三振で攻撃を終えると、7回表は「緊迫していた」と3者連続三振。打線の奮起を促すべく腕を振ると、終盤3イニングで7三振を奪った。前半が省エネモードだっただけに、9回にも144キロを計測。最後は2死一、三塁と長打が出れば逆転という場面を迎えたが、宝刀スライダーで空振り三振に取り「危ね~」と息をついた。

 試合前夜も携帯型ゲーム機を一緒に楽しむなど「大好き」という3年生と試合ができるのも、今大会が最後になる。1試合でも長く同じグラウンドに立つため「楽しく優勝を目指したい」と結んだ。【斎藤直樹】