史上最多の東北勢5校が出場するセンバツに、福島・いわき市出身のドラフト候補がいる。第85回選抜高校野球大会(13日間、甲子園)が今日22日、開幕する。強肩強打の常総学院(茨城)内田靖人捕手(3年)は、いわき海星(福島)坂本啓真主将(3年)の幼なじみ。大阪桐蔭・森友哉捕手(3年)ら捕手に注目選手がそろう今大会で、主役の座を狙う。

 4番で捕手で主将。185センチ、85キロと恵まれた体の常総学院・内田は、8日に解禁された練習試合で9戦5発と絶好調だ。昨夏の甲子園、桐光学園・松井裕樹投手(3年)から19三振した試合で2安打2打点をマークし、注目を浴びた。

 出身は福島県いわき市。いわき海星の坂本主将や聖光学院の主砲・園部聡内野手(3年)とは親友。特に坂本とは幼なじみで家が隣だった。内田は「正月にあいつと『甲子園で会おうな』って約束したんです。それが果たされた」と笑顔で話す。“ホームグラウンド”を気にかけていたからだ。

 いわき海星グラウンドは津波で壊滅的な被害を受けた。自らも小さいころに野球教室に参加し、慣れ親しんだ場所。そこで困難に負けず野球をしてきた親友が21世紀枠で出場する。「野球ができる状況じゃなかったのに…。そこから出てくるなんてすごい」。

 親友に負けてはいられない。内田はこの冬、内野手から捕手に転向した。中学の時に少しだけ経験しただけだったが、遠投110メートルの自慢の肩をより見せられると練習に励んでいる。佐々木力監督(46)は「大学やプロ、上がほしがるポジションに挑戦させようと思った」と説明する。

 捕手になり打撃も進化。配球が前より予測できるようになり、狙い打ちの確率が上がった。さらに体幹を鍛え直し、ボールを見極められるノーステップにフォームを改造。より芯で捉えられるようになり、打撃の飛距離が伸びた。

 内田は「甲子園という大舞台でいわきや福島のみんなと野球ができるのは縁だと思う。自分が活躍すれば福島の人も茨城の人にも元気を与えられる。そんなプレーがしたい」と話す。チームだけでなく福島と茨城を背負うには少し荷が重いかもしれない。それでも“若き侍”がどでかい1発を放つ姿を期待せずにはいられない。【島根純】

 ◆内田靖人(うちだ・やすひと)1995年(平7)5月30日、福島県生まれ。小学校2年から野球を始め、中学ではいわき松風クラブで全国ベスト8。憧れの主将は元ソフトバンクの小久保裕紀氏。よく聴くアーティストは「GReeeeN」。185センチ、85キロ。右投げ右打ち。