<高校野球静岡大会:富士市立3-2静岡>◇26日◇準々決勝◇草薙球場

 新興勢力が県内屈指の投手を破り、初のベスト4に進出した。富士市立は2点差を追いつき迎えた延長10回、静岡・水野匡貴投手(3年)相手に2死から3連打で勝ち越し点を挙げ、今春の県大会でコールド負けした雪辱を果たした。

 富士市立の粘りが名門静岡をのみこんだ。延長10回、2死から一、三塁とし、打席には2番田原仁太内野手(2年)。「初球が一番打てると監督に言われたので狙っていた」。真ん中やや外の直球を流し打ちし、勝ち越し点をもたらした。「終わった時の方がうれしかった」。その裏、最後の打者の二ゴロをさばき歓喜に浸った。

 春の県大会準々決勝で、0-10の5回コールド負けを喫した相手に食らいついた。5回に2点を失うも、6回にスクイズ、7回に犠飛で同点。それでも9回には流れを失いかけた。1死一、三塁からの内野ゴロで三塁走者が挟まれる。その間に三塁を狙った一塁走者が三塁直前でタッチアウト。続けて三塁走者もタッチされ併殺に終わった。そこからつかみ取った勝利。戸栗和秀監督(48)は「春の悔しさを子どもたちが持っていた。それで練習してきたから」とたたえた。

 だが、実は大会前はどん底の状態だった。6月上旬、ほとんどの3年生が練習から外されていた。「練習する意味がない」(戸栗監督)ほど気持ちが入っていなかったからだ。グラウンド整備やトイレ掃除などに取り組み直して約2週間後にやっと練習を許された。

 野球ができる喜びを知ったナインは、3回戦の静清戦でも9回に1点差を追いついてからサヨナラ本塁打で勝つなど、1度もコールド勝ちのない試合を重ねて強くなった。田原は、ここまで3試合中2試合が5回コールドだった静岡に対して「積み上げてきたものが違う」と語った。

 今日27日には、ともに初の決勝進出をかけて菊川南陵と戦う。「勢いだけ持っていって、気持ちを切り替えたい」と挑戦者の立場を強調した。強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強い。これが夏の高校野球だ。【石原正二郎】