防御率0・00のまま、日本一へ駆け上がる。第95回全国高校野球選手権大会は今日21日、準決勝2試合が行われる。今大会4試合に登板して自責点0の前橋育英(群馬)高橋光成(こうな)投手(2年)は20日、大阪・豊中市の豊中ローズ球場で調整練習を行い、日大山形戦で完封を目指すことを宣言した。この日は日程の公平性や選手の健康面を配慮し、大会史上初の休養日。日大山形、花巻東(岩手)延岡学園(宮崎)も練習を行い、準決勝に備えた。

 4試合に登板し、自責点0、防御率0・00の前橋育英・高橋光が宣言した。準決勝に向けて「0への意識とかこだわりはないです。ただ点を取られなければ、負けない。自分が投げて完封しているイメージしかないです」。甲子園という大舞台で成長を続ける右腕には新たな欲が出てきた。

 初戦の岩国商(山口)戦で9者連続三振を含む13三振を奪って完封し、自信がついた。群馬大会では6試合計38回を投げて6失点。甲子園では4試合計32回を投げて1失点。「直球は今すごく自信があります。早く150キロを出したい!」。春の関東大会決勝ではセンバツ覇者の浦和学院に敗れ、チーム全体で打倒・浦和学院を掲げたが、「今は浦和学院とやっても負ける気がしない」と強気だ。

 4強の中で唯一、1回戦から勝ち上がった。準々決勝の常総学院戦直後には「握力が下がってきた」と話すなど疲労はある。この日の練習ではチームの打撃練習に加わらず、球場の周りを約5周、45分程度かけて歩くだけのノースロー調整だった。前日、自打球を当てて右膝を痛めて「正直痛いです」。だが、「1日空けば大丈夫。(準決勝は)1人で投げ切るつもりです」と力強く話した。

 大一番を目前にしても無邪気なところは変わらない。準々決勝では救援登板し5回3安打10奪三振。2点を追う9回2死二、三塁で同点適時三塁打を放つなど投打に活躍した。日本ハム大谷に憧れており「二刀流も目指したいっす!」と少し照れながら話した。練習後の予定を問われると「お風呂、サウナに行きます」と元気いっぱいだ。

 1日の休養日を有効利用したエースの起用について、荒井直樹監督(49)は「頭から大丈夫だと思います」と先発を示唆。成長著しい2年生右腕が決勝へと導くはずだ。【栗田尚樹】

 ▼前橋育英・高橋光はここまで32回を投げ、失点1、自責点0。最近1失点で優勝投手となった例には、5試合45回を完投し失点、自責点ともに1の92年森尾(西日本短大付)がいる。89年吉岡(帝京)も5試合40回で失点、自責点1で優勝した。失点の大会記録は、5試合連続完封で優勝した39年嶋(海草中)48年福島(小倉)と3試合21回を投げた33年楠本(明石中)の0。

 ◆豊中ローズ球場

 第1回全国中学優勝野球大会(現在の夏の甲子園)は1915年、「豊中グラウンド」で開かれた。67年に同グラウンド跡地から約2・5キロ南に豊中市が「豊島公園野球場」を開設。96年に全面改修され「豊中ローズ球場」の愛称がついた。バラは豊中市の市花で、豊島公園内にはバラ園がある。両翼95メートル、中堅115メートル。内野スタンドは1182席。所在地は豊中市曽根南1の4の2。