<センバツ高校野球:関東第一4-2美里工>◇24日◇1回戦

 勝ちを意識した美里工(沖縄)エース伊波友和投手(3年)にとって魔の8回となった。2点リードの2死満塁。五十嵐に外角スライダーを右前に運ばれる同点適時打を許す。「ここで流れを切ろうと力が入ってしまった」。続く臼井に1ストライクから外角いっぱいを狙った直球がシュート回転し真ん中へ。左翼フェンス直撃の勝ち越し2点適時打。まさかの4失点となった。

 伊波は疲れを否定したが、捕手の与那嶺は「7回からスタミナがなくなってきていた」と明かした。ベンチには九州大会で完封したダブルエースの長嶺が控え、ブルペンでは左腕島袋が準備していた。神谷嘉宗監督(58)は「継投ミスと言えばミスかもしれない」と悔やんだ。

 昨秋、沖縄尚学との九州大会決勝でも伊波は1点リードを守れず8回に2点を奪われ逆転負けしている。同じ悔しさを甲子園でも味わった。美里工は選手間投票でメンバーを決める。秋には伊波は背番号1に「長嶺」と書き投票した。だが、センバツ前最後の投票では「伊波」と自分の名前を記した。自信を持って臨んだマウンドだった。

 この日は終業式のため野球部以外の生徒たちは学校でテレビ応援。伊波は何度も両手を広げ「みんなの力をもらおう」と天を仰いだ。「負けて申し訳ない。1球の重みを感じた。3人ライバルがいるので争って全員エース級で甲子園に帰ってきたい。自分が背番号1で」と夏もエースの座を譲る気はない。【石橋隆雄】