<高校野球群馬大会:前橋12-9高崎工>◇12日◇1回戦◇敷島グラウンド

 高崎工の5番氷見(ひみ)直也中堅手が大会第1号を、父と友にささげた。前橋との打撃戦に敗れたものの、4打数3安打4打点と気を吐き、チームを鼓舞し続けた。「振り切りました。これまでにない、最高の当たりでした」。思いは確実に届いたと実感する、美しい放物線だった。

 中1の時、父和夫さん(57)がくも膜下出血で倒れた。現在も後遺症があり、母久仁子さん(53)がつきっきりで生活する。高崎工を選んだのは、「大学には多分行けないので、就職率が高いところに進もうと。地元で就職して(両親の)近くにいた方が安心だと思って」という理由からだった。和夫さんはテレビで本塁打を見ており、「すごいな」と喜んだ。現在も記憶力に障害が残り、新しいことが覚えにくい。だが、息子が最後の夏に見せた1発は、ずっと心に残り続けるはずだ。

 また昨年11月、チームメートの関亮太さん(3年)が白血病で入院し、通学も困難になった。それでも病床から仲間を激励し続け、勝てば次戦は応援に駆けつける予定だった。氷見は試合後、「試合を見せたかった。ごめんと言いたい」と寂しそうに笑った。【岡崎悠利】