<高校野球東東京大会:明大中野3-1広尾>◇16日◇3回戦◇神宮第2球場

 これが、正真正銘の“お祭り男”だ。明大中野(東東京)のルーキー、背番号「10」の川西雄大投手(1年)が、公式戦初登板初先発で、10奪三振1失点で完投し、広尾を破った。小学1年時に、夏祭りで見せた制球力を買われてスカウトされた異色右腕だ。

 こんな暑い季節が大好きだ。4月に入学したばかりの1年生、171センチ、67キロの川西が、右サイドスローから、ストライクゾーンの四隅を丹念についた。5安打10奪三振で、1失点完投。「コントロールには自信があります」と、気持ちよさそうに汗をぬぐった。

 あの日も、暑い夏の日だった。小学1年時に、府中市・若松小で行われていた夏祭りに参加した。屋台や、ちょうちんが並ぶ脇に、「ストラックアウト」の会場があった。

 「9球で、9枚落としたんです。野球って、楽しいなって思いました」

 ストライクゾーンを9分割し、ボールを投げて9枚のパネルを落とすゲーム。川西は、9球パーフェクトで達成し、お菓子をゲットした。その姿を偶然見ていたのが、若松小野球部の監督だった。「ぜひ、うちで野球やってみないか」。思わぬ“スカウト”で、野球の世界に飛び込んだ。

 中学時代にサイドスローに転向。西武十亀に憧れ、最速135キロの直球に、カーブ、スライダー、チェンジアップ、ツーシームを投げ分ける。5回にはソロ本塁打を浴びて1失点したが、高校デビュー戦で135球を投げ抜いた。「ピンチでは、相手のバッターより、気持ちを強く持つことが大事です」。冷静に分析しながら、広尾のプロ注目143キロ右腕、舛田崚投手(3年)に投げ勝った。

 自慢の制球力を磨くため、投球練習は捕手のグラブが動かなくなるまで、同じコースに投げ続ける。卒業後は「明大の野球部に入りたい」と、東京6大学リーグで投げることが夢だ。明大のサイドスローといえば、元巨人鹿取義隆氏(57)だが、99年生まれのルーキーは「鹿取さんですか、すいません」ときょとん。次戦は今春センバツに出場した関東第一と対戦する。番狂わせには、夏が大好きな“お祭り男”の活躍が欠かせなそうだ。【前田祐輔】