<高校野球南北海道大会:浦河8-4札幌北陵>◇17日◇1回戦◇札幌円山球場

 創部67年目の浦河が道大会初勝利をつかんだ。札幌北陵に1点ビハインドで迎えた6回、菊地奨悟中堅手(3年)の2点左前打で逆転。7回には沢口友亮捕手(3年)の2点三塁打でエース菊地悠也(2年)を援護した。9回に熱中症で退いた選手に代わって佐藤匠悟一塁手(3年)が“緊急出動”するなど、3人しかいない3年生がチームを支え、歴史的1勝を手にした。

 試合前、高らかに響いたG1レースのファンファーレを合図に、選手17人の心が、ぴたりと合わさった。想定外の状況にも、くじけない。60年ぶりの道大会出場(南北分離後は初)で、初勝利を挙げた沢口主将は「戦い切ったという感じですね」。総力戦に、ゲームセットの瞬間は、喜ぶ力も残っていなかった。

 数々の窮地を、3人しかいない3年生が救った。室蘭地区予選から1人でマウンドを守ってきた菊地悠が、毎回のように走者を背負う展開。重いムードを一掃したのは、兄・菊地奨の一振りだ。1点ビハインドの6回2死満塁で、逆転の2点適時打を左前へ。4番の仕事に「頑張って弟が投げていたので、負けたくなかった」と、兄の意地を見せた。沢口は、打っては3安打2打点、守っては4回1死満塁でスクイズを外すなど、好リードで2年生右腕を支えた。

 競走馬の生産地として知られる浦河町は、この時期でも夕方になれば長袖を着用するほど、涼しい。正午には気温27度を超えた札幌の気候は、想像以上にこたえたようだ。

 終盤に入って、体の異変を訴える選手が続出する。足をつりながらもグラウンドに立った菊地兄弟に加えて、9回、勝利までアウト1つという場面で二塁手の沢木が動けなくなり、担架に乗せられ退場した。いずれも、軽い熱中症だった。代わって守備に就いた佐藤は、本来は代打要員で「守備練習なんてほとんどしたことがないので、ドキドキした」と苦笑い。「グラウンドでは沢口がまとめているので、僕はいつもベンチで声を出して頑張っている」という3年生が、大事な場面で、この夏、初めてファーストミットを手にした。

 吉田健作監督(33)が「選手は素晴らしかった」とたたえた精神力。今大会のダークホースが、また1つ、壁を越えた。【中島宙恵】

 ◆浦河高

 1932年(昭7)6月1日、町立浦河実践女学校として開校。戦後の47年に道立浦河高等学校となり、男女共学化された。06年の日本ダービー馬メイショウサムソンなどを輩出した馬産地とあり、馬術部は4年連続高校総体道代表。生徒数422人(男子201人)、小島晶夫校長。所在地は浦河郡浦河町東町かしわ1の5の1。

 ◆浦河60年前の夏

 南・北北海道分離前の1954年(昭29)、室蘭地区を1回戦5-4富川、2回戦4-0伊達、代表決定戦4-2室蘭栄で初めて突破した(当時は地区決勝もあり、7-0苫小牧工)。道大会1回戦は旭川東から1回表に無安打で1点先制も、相手投手好投もあり追加点を奪えず。1-6で敗れた。