<全国高校野球選手権:聖光学院2-1近江>◇21日◇3回戦

 聖光学院が福島の球史に名を刻んだ。近江(滋賀)に劇的な逆転サヨナラ勝ちで、4年ぶりの8強入り。夏3勝となり、71年に準優勝した磐城の福島最多記録に並んだ。今泉慶太(2年)と船迫(ふなばさま)大雅(3年)の継投で最少失点に抑え、9回裏に7番石垣光浩内野手(3年)のセーフティースクイズで試合を決めた。福島県勢は春夏通算40勝(70敗)。今日22日の準々決勝で、4強入りをかけ日本文理(新潟)と対戦する。

 聖光学院の誇る2枚看板の踏ん張りが、サヨナラ勝ちにつながった。先発の今泉が自己最速138キロの速球にスライダー、チェンジアップを織り交ぜて好投。6回無死一塁からボークを取られたのが響き1点こそ失ったが、強力打線の近江に長打は1本も許さず最少失点に抑えた。「勝てて良かった。感謝の言葉しかない」と胸をなで下ろした。

 3日の大阪入り後から、体が開き気味になるフォームを必死に修正した。他の投手が投球練習をしなくても、1人でマウンドに立つ日もあった。その効果でシュート回転する球が減り、右打者の内角への制球がよくなった。この日は無四球。神戸国際大付(兵庫)との1回戦も先発して、6回を被安打4の1失点に抑えた。夏の福島大会からベンチ入りした2年生右腕は、伸びしろが大きく短期間で急成長。斎藤智也監督(51)は「今泉は前回同様、素晴らしいピッチング」と目を細め、チームに欠かせぬ投手の1人になった。

 6回2死一塁から今泉を救援した右横手投げのエース船迫は、気迫の投球だった。「絶対に1点もやりたくないという気持ちで投げた。いつでもいける準備をしていた。いつもと変わらない自分がいる」と3回1/3を被安打2の無失点。石垣のサヨナラスクイズ時には、ネクストバッターズサークルに入る準備で歓喜の輪に遅れ「みんな(本塁に)行っちゃって、あ~、って感じ」と笑った。帽子のつばの裏に「小さな巨人」と書き込む。身長172センチ、62キロと投手としては小柄だが、9回には自己最速を3キロ更新する138キロを計測した。

 1点差2試合、2点差1試合。甲子園を接戦で勝ち切り福島最多記録、71年磐城の夏3勝に並んだ。43年ぶりの快進撃にも今泉は「僕らは日本一を目指してやってきている」と満足はしていない。斎藤監督は選手と同じ気持ちだ。「次を勝てば福島にとって大きな歴史になる。ここからは連戦。勢いだと思う」。聖光学院の14年夏が、ヒートアップしてきた。【久野朗】

 ◆71年磐城の準優勝

 現在の49校より少ない30校が出場し、磐城は初戦の2回戦日大一(東京)に1-0、準々決勝静岡学園に3-0、準決勝郡山(奈良)に4-0と3試合連続完封で決勝進出。決勝は桐蔭学園(神奈川)に0-1で敗れた。福島県勢の夏2勝以上は磐城が3回、学法石川1回、聖光学院5回。