<センバツ高校野球:利府2-1習志野>◇29日◇2回戦

 21世紀枠の利府(宮城)が習志野(千葉)に2-1でサヨナラ勝ちし、甲子園初出場でベスト8進出を果たした。1-1で迎えた9回裏2死一、二塁から、2番藤原昂哉(2年)がセンター前に、サヨナラ打を放ち劇的な勝利。10安打されながら1失点に抑えた、粘投のエース塚本峻大(3年)に報いた。宮城の公立校としては初のセンバツ8強入り。夏の甲子園も含めると69年の仙台商以来、40年ぶりの快挙だ。

 藤原の打球がセンター横に抜けた。その瞬間、打のヒーローの目に涙があふれた。前の打席まで4打席無安打。本来は、バントや足が武器の2番が決めた。野球人生初のサヨナラ打。遠藤聖拓主将(3年)が「笑おうぜ!」と声を掛けたが、ナイン全員がもらい泣きだ。

 2死二塁で1番の遠藤が敬遠された。だが昨秋から何度も同じ状況があり、そんなことには慣れっこ。腹が立つこともなく、平常心は揺るがなかった。3番馬場康治郎(3年)はこの日2安打。「馬場さんにつなぐことだけを考えた。狙い球は絞らず、真ん中高めの真っすぐを思い切りたたいた」と藤原は振り返った。

 2月に痛めた右手親指が、まだ完治しない。初戦の掛川西戦(27日)で藤原は2回、相手の飛球を好捕。このダイビングキャッチで首と右足首を痛めた。さらに甲子園入りしてから風邪をひき、この日も微熱がある状態。鼻には花粉症対策のテープを張った姿。満身創痍(そうい)でチームの勝利を決めた。思いがこみ上げた涙だった。

 万全でなかったのは、投のヒーローも同じだった。塚本は前夜、37度8分の熱があったが、粘り強いピッチングで最少失点に食い止めた。「走者を背負ってから外角にしっかり投げることができた」という。9回に代打で遊安打を放ち、サヨナラ劇の足場をつくった浅野七海(3年)も含め、10人ほどが風邪をひいていた。悪コンディションを乗り越えてつかんだ勝利だ。

 甲子園初出場で、夏2度全国Vの名門習志野を破っての2勝目。小原仁史監督(46)は「緊張でガチガチになるかと思ったが、意外に普段通りにできていた。甲子園は選手を成長させてくれる球場なんですね」と目を細めた。さあ、次なるターゲットは早実。「06年夏の優勝をテレビで見た。早実とやれるなんて考えただけで鳥肌が立つ。21世紀枠のチームとして挑戦したい」と塚本が目を輝かせた。【北村宏平】