<センバツ高校野球:報徳学園6-5中京大中京>◇30日◇準々決勝

 報徳学園(兵庫)平本龍太郎捕手(3年)が、記録ずくめの活躍で7年ぶりの4強に導いた。6打数6安打だった2回戦に続き、先制適時打を含む2打席連続安打で8打席連続安打の大会記録に並んだ。通算塁打は大会新の21塁打に伸ばし、6-5の逆転で中京大中京(愛知)を破った。

 記録男がまた打った。4回1死一塁の第2打席。平本が放った打球は中京大中京中堅手・岩月の頭上を大きく越えていった。同点の適時二塁打。27日の2回戦・今治西戦から8連続安打で、センバツタイ記録を樹立した。

 5回2死三塁では空振りの三振に終わり、9打数連続安打の新記録はならなかったが、快音は止まらない。8回2死走者なしで左前打。大会通算21塁打となり、65年の市和歌山商・藤田平(元阪神監督)らの20の個人最多塁打記録を塗り替えた。「記録は知らなかった。それよりも勝ててうれしい」。1点を追う9回2死から試合をひっくり返す“逆転の報徳”の伝統を継承する勝利に目を真っ赤にした。

 27日は6打数6安打の大当たりで甲子園新記録の「1試合最多16塁打」を含む3つの記録をつくった。永田監督は打撃好調を買い、打順を8番から6番に上げた。2回には先制打、4回には同点打。「前の試合のことは忘れてやりました。記録をつくるために野球をやってるんじゃないので」と期待に応えた。

 今治西戦の前日26日に「(チームで)声が出ていない」と永田監督に結束力の欠如をとがめられて気持ちが引き締まった。6打数6安打で脚光を浴び、仲間が祝福しても「たまたま」と浮かれることはなかった。記録よりも勝利。チームもまとまった。

 この日の朝、永田監督が「自転車で来られる2年生は試合前に朝練をやろう」と声をかけると、平本ら3年生も姿を見せた。大角コーチは「ベンチをはずれた選手もバットを振りに来ました」と言った。チームのためにという選手全員の思いが逆転劇につながった。

 9回の攻撃前、永田監督は円陣を組んでこう鼓舞したという。「必ず逆転できる。先輩たちもやってきた。お前らはそれ以上に練習している」。伝統と練習と結束が、平本の記録と02年以来の4強入りをもたらした。