<センバツ高校野球:花巻東5-3南陽工>◇3月31日◇準々決勝

 花巻東(岩手)のドラフト1位候補左腕、菊池雄星投手(3年)がリリーフ&決勝打で初の4強進出を決めた。2点を追う6回から登板し、最速148キロで4回無失点。7回には決勝適時二塁打を放った。連続無失点イニングを22回に伸ばし、5-3で南陽工(山口)を破った。

 菊池がバットでも魅せた。2点差を追いついた7回、なおも2死一塁。カウント2-2から、外角高めの直球を、逆方向へ流し打ち、試合をひっくり返した。

 菊池

 打撃は期待されてないので、三振でもいいと思い切って振りました。勝利への執念があって、体が勝手に打たせてくれた感じです。

 3月29日の明豊(大分)戦で147球を投げた。準々決勝以降の連戦を考慮し、先発しなかった。しかし2点ビハインドの6回、「投げたくてわくわくしていた」とマウンドに走った。テンポよく内角を攻めてアウトを積み重ねた。9回2死満塁のピンチも、落ち着いて145キロの直球を外角いっぱいに決め、見逃し三振。この日も得点を許さなかった。

 菊池

 試合の流れを変えるのがエースだと思う。そういう意味では、いい投球ができた。自分が上がった時点で勝てるなと思った。

 環境が、屈強な体と視力を生んだ。視力は両眼ともに2・0を誇る。父方の祖父俊一さん(71)が花巻市内の自宅農園でブルーベーリーを栽培。目に良いとされる成分を幼いころから食べ続けた。同時に地元米「ひとめぼれ」もたいらげて、恵まれた眼力と肉体を身につけてきた。

 1日、同じ東北の利府(宮城)との準決勝に挑む。菊池は「もし自分が先発なら、肩が壊れてもいいので最後まで投げたい」と言い切った。休日だった2回戦は、家族がETCの“1000円高速”を利用して1950円で岩手からやって来た。平日のこの日は1万円以上かかったが、来た価値はある。東北勢初の全国制覇まで、あと2勝。菊池には大旗しか見えていない。【由本裕貴】