<高校野球茨城大会:常磐大高11-2明野>◇12日◇2回戦

 世界遺産への落書きが発覚し監督が解任された常磐大高(茨城)はナインが奮起、コールド勝ちで初戦を突破した。

 常磐大高の初戦にかける思いは、いきなりの先頭打者アーチとなって表れた。1回裏、それも初球だった。先頭の益子亘主将(3年)が強振した打球はライナーとなって左翼席に飛び込んだ。益子は「思いっきり振って、空振りでも本塁打でも、選手に笑顔を取り戻そう、夏の大会を楽しむんだということを伝えたかった」と話した。

 周囲をあっといわせ、雑音をかき消すに十分な1発だった。益子には高校通算41本目、先頭打者アーチは初めてだった。主将の1本で勢いづき、打線は2本塁打を含む9安打して11得点を挙げた。昨年の準優勝校は何事もなかったように初戦を突破した。

 大会直前の大事な時期に野球に集中できなかった。練習再開の3日には周囲の目を避け、通常自転車で向かう練習場まで父母の送迎を受けた。グラウンドも道路に面した高校用を避け、大学用を借りた。そんな異例の中で迎えた初戦。益子は前日のミーティングでこう話した。「やるのは自分たちで、周りの声は関係ない。自分が主役と思って楽しんでやろう」。初采配をふるった須藤雅史新監督(29)からは「自分が夏の雰囲気に慣れていなかった。経験している益子に救われました」と感謝の弁も飛び出した。

 須藤新監督には試合前、前監督からメールが届き、そこには「頑張れ」とあった。選手はそれを聞いて出陣した。益子がいう。「このチームは(前監督が)つくってくれた。育ててくれた恩返しをしたかった」。前監督にこたえるには、昨年あと1勝で逃した甲子園をつかむしかない。