千葉ロッテマリーンズの応援歌はなぜ心に残るのか-。今季から担当記者となり、開幕してから1カ月半。知らず知らずのうちに、応援歌を口ずさみたくなるようになってきている。音楽評論家であり、マリーンズファンのスージー鈴木氏(57)に3回にわたって徹底的に解説してもらった。【取材・構成=星夏穂】
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きっかけはソトの応援歌だった。地をはうような低音の合唱に中毒性がある。SNSでは「魔曲」とも言われている。ロッテの応援歌が醸し出す「何か」を解説してくれる人を探した。95年からファンとして、ZOZOマリンに通っていたスージー氏にお願いした。まずはロッテの独自スタイルについて聞いた。
「メロディーとかリズムとか明らかに他の球団の応援歌とは違って、独自なものがあると思いますね。割と生声中心。あと、ドンドンっていう大太鼓の位置付けも、他の球団と比べて少し違う。声とか手拍子が中心のヒューマンな響きが印象的です」
SNS上でも「他球団ファンだけどロッテの応援、かっこいい」と話題を呼んでいる。他球団とは違う、今のロッテ応援歌の礎を築いた人物がいた。
「ロッテの応援歌を作っていた、音楽に詳しいジントシオという方がいて。J-POPにも精通していて、今の感覚の音楽を作りたいという人だった。ジントシオの音楽的知識、新しい応援歌を作りたいという野心。応援歌作りの中で彼の存在感は大きいと思います」
日常生活でも耳にする機会の多いJ-POP。口ずさんでしまうような親近感のあるものに仕上げるために、さまざまな工夫が凝らされているという。
「転調、キーを変えるっていうのが最近のJ-POPでは非常に多い。しかし応援歌で転調というのは、そもそもコード楽器(ピアノやギター)がないので、なかなか難しい。その中で、明らかに転調しているメロディーだなっていうのが、荻野貴司。あれはコード進行がJ-POP。メロディーの途中で違うキーに行ってる。具体的に言うとFからAフラットに行ってるんです。ちょっと空気感が変わる感じ。こんな応援歌は他にないと思います」
確かに「ラララ…駆け抜けろホームまで 荻野貴司」から「(演奏)オイ!×6 打て荻野(タ・カ・シ!)」に移るところで曲の雰囲気がスッと変わる。長年親しまれている荻野の応援歌の他にも、聞きなじみやすい応援歌があった。
「一番好きなのは清田育宏(元ロッテ)ですよ。もっとはっきりCからEフラットに転調します。分かりやすくJ-POP応援歌ですね。他の球団の応援歌がまだ行進曲とか軍歌とか、そんな感じの応援歌が多い中、この2曲は非常に新しい。普通に今ラジオとかテレビから流れてるJ-POPの旋律、コード進行ですね。YOASOBIに歌ってほしいです(笑)」
ロッテの応援歌は高校野球応援でも頻繁に取り入れられることが多い。今や定着しているものが実はロッテの応援歌だと後から知ることもあるほど。福浦和也(現ロッテ1軍ヘッド兼打撃コーチ)の応援歌などは定番化している。
「新しい感覚があるってことじゃないですか。でも生徒たちが自分で作っていいんですよ。別に音を外してもいいんだよとは思いますけどね。やっぱり応援団が楽しそうに応援歌歌ってる姿は僕は好きです。だから戦前に作られたような古めかしい暗い曲じゃなくて、音楽的にもっと面白いことすればいいのにって思うんです。出来合いの楽譜みたいなものがあって、それが流通してるからなんですよね。応援なんですから、学生がアレンジしてもいいと思うんです。他の球団の応援歌ももっと面白くてもいいだろうとも思います。面白い応援歌の象徴が荻野貴司であり、清田育宏ですね」
独創性のあるロッテのスタイルを踏襲するだけではなく、もっと枠からはみ出てオリジナルを生んでいい。伝統と新しさを兼ね備えた応援に、スポーツ観戦の醍醐味(だいごみ)がある。
「やっぱりスポーツって喜怒哀楽の爆発だと思うんですよ。これ僕の言葉じゃなくって。19年2月22日の日刊スポーツで、Jリーグの村井満チェアマン(当時)が『サッカーの魅力は、喜怒哀楽の爆発だ』と述べていました。日々の社会生活ではできない、自分の喜怒哀楽を爆発させることが一番のサッカーの楽しみなんじゃないかって。そらそうだなと思って。だから応援団の若者が楽しそうに歌っているのはいいんじゃないかなって風に思いますね」。(つづく)
◆スージー鈴木(すーじー・すずき)1966年(昭41)11月26日生まれ。大阪府東大阪市出身。早大在学中にFM東京「東京ラジカルミステリーナイト」の「AUプロジェクト」に参加し、「スージー鈴木」の名でラジオデビュー。98年11月創刊の「野球小僧」で野球音楽評論家としてデビュー。現在はラジオ番組BAYFM「9の音粋」にレギュラー出演するなど活躍の場を広げている。




