第90回全国高校野球選手権記念大会(8月2日から17日間、甲子園)の出場権をかけた南北海道大会が13日、札幌円山球場で開幕する。室蘭地区2回戦の室蘭栄戦で完全試合を達成し、一躍全国の注目選手となった佐藤賢太投手(苫小牧中央2年)が開幕日から登場。室蘭栄戦の再現を目指し、初出場のチームをけん引する。12日は公式練習が行われ、札幌地区を除く9校が円山の感触を確認した。

 公式練習の最後の5分間「完全君」佐藤賢はしっかりと円山のマウンドを味わった。「(室蘭)新日鉄よりちょっと高いかな。イメージはできました」。練習を終え控室への通路に入ると、何人もの報道陣に取り囲まれた。「あの日」から始まったパーフェクト・フィーバーはまだ収まっていない。

 6月26日の室蘭地区2回戦、室蘭栄戦で全国でも10年ぶりとなる完全試合を達成した。インターネットの時代、すぐに情報は全国に流れた。全国から雑誌社が3社も佐藤賢の取材に訪れた。中学時代のチームメートらからもメールが次々と届き「すごいことをやったんだ」とあらためて実感したという。

 それでも有頂天になることはなかった。「完全試合は僕1人の力でできたわけじゃない。バックのみんなが達成させてくれたもの」と、野手陣への感謝を忘れない。渡辺宏禎監督(39)も「3年生のために自分がしっかりしないと、という意識がある子」と佐藤の強さの一端を話す。

 主武器は130キロ台後半の勢いのある速球。スライダーとカーブを交ぜながら際どくコースを突き、3試合19イニングで1四球だけという制球力も自慢だ。さらにまだ公式戦では見せていないフォークもいつでも使える状態にある。「サインが出たら今度は投げてみたい」と新球への挑戦も口にした。

 地区での完全試合で話題をさらったが、強豪が集まる南北海道大会でこそ真価が問われる。「いい打者がいっぱいいる。同じことができるとは思わないけど、バックを信じて打たせて取ることを心がける。目標はもちろん甲子園です」。17歳の若武者の右腕が、初出場のチームを一気に聖地へと導く原動力になる。【本郷昌幸】