<高校野球広島大会:広島商2-1油木>◇14日◇1回戦

 名門が薄氷の勝利で初戦を突破した。3日目は14日、広島市民球場などで1回戦16試合が行われた。コカコーラウエスト野球場では夏の甲子園出場22回、優勝6回の広島商が満を持して登場。油木のエース馬屋原徹(3年)の前に「0」行進が続いたが、9回に追いつき、延長12回にサヨナラ勝ち。苦しみながら初戦を突破した名門が、安西の待つ2回戦に駒を進めた。

 2時間50分に及ぶ死闘の幕切れは突然訪れた。1-1のまま突入した延長12回2死一、二塁。マウンドには油木先発の馬屋原徹、打席には9回に同点打を放った松原拡希(3年)。運命の5球目だった。二走の上松諄一郎(2年)がノーサインで三盗を仕掛ける。

 中岡健太捕手(3年)の送球が逸れるのを視界の隅にとらえると、迷わず三塁ベースを蹴った。本塁に頭から突っ込む人生初のサヨナラホームイン。「勝負しました。満足感があり、うれしいです」と興奮冷めやらぬ上松。

 名門がなりふり構わずに勝負した。エース末政純(3年)が初回に連打で先制を許すと、相手エース馬屋原徹の前に8回まで3度の3者凡退など、わずか3安打…。「攻撃面で悪戦苦闘」(播本将太主将=3年)する間に、気付くと9回まで進んでいた。

 この回先頭の平岡義貴(3年)が執念の中前打で出塁。勝負どころで田代秀康監督(52)がすかさず動いた。100メートル11秒9の俊足・上松を代走に送る。向井伸(3年)が手堅く送り1死二塁に。次打者が倒れてがけっぷちの中、松原が三塁線を破った。

 好発進とはほど遠いが、44回大会(1962年)以来となる初戦敗退(三次との2回戦、2-4)は免れた広島商。「苦戦も苦戦。ただ守って後半勝負は成し遂げた」と田代監督。起死回生の同点打を放った松原は「追い込まれていたが平常心だった」。全国的知名度を誇る名門が、苦しみながらも初戦を突破した。【佐藤貴洋】