<高校野球広島大会>◇28日◇準々決勝

 広商が来た!!

 名門復活を狙う広島商は福山誠之館に3-2で逆転サヨナラ勝ちし、5年ぶりの夏代表に前進した。

 幾度ものドラマを生んできた旧広島市民球場が、揺れた。広島商の佃勇典(2年)の高い外野フライを左翼手が捕球した瞬間、三塁走者の三枝幸太(3年)がスタートを切る。同時間帯に他球場で、広陵が呉港に勝利目前だった。昨夏、準々決勝で3-15の6回コールド負けを喫した相手が勝ち上がってくる。「負けられない」-。三枝が頭からサヨナラの本塁に突っ込むと、三塁側ベンチからナインが一気に飛び出した。

 神懸かりだ。1-2の9回表無死二塁から登板した背番号1の川野友耀(3年)がピンチをしのぎ、9回裏へ。1死から岡本章吾内野手(2年)の強打が一塁手前でイレギュラーし、右翼へ転々とする間に二塁へ。続く三枝が外角変化球を右越えに三塁打して同点。4番が四球で歩くと「外野フライでいい。何が何でも」と佃がカウント0-1から勝負を決めた。

 平成生まれのナインは、広島商の“伝統”を直接知らない。「真剣の上をハダシで渡る」。「集中力向上のため、はしで豆をつまむ」。「制帽を被って街を歩けば女子中高生から握手を求められる」-。ほとんど都市伝説と化したが、そんな時代は確かにあった。

 1988年(昭63)夏の6度目の全国制覇を境に、名門は輝きを失った。平成に入って、夏の甲子園出場は04年だけ。「楽な試合はひとつもない。広陵?

 力は相手の方が上ですが、挑戦したい」と田代監督。広島商で選手として73年の春準優勝、夏優勝を味わった。監督としても甲子園の土を踏んでいる。平成生まれのナインを聖地に-。広陵の高い壁を乗り越え、名門復活ののろしをあげる。【佐藤貴洋】