<高校野球南北海道大会>◇2日◇代表決定戦◇室蘭地区予選

 室蘭地区代表決定戦で室蘭大谷が9-2の7回コールドで苫小牧高専を破り、8年ぶり29度目の南北海道大会に名乗りを上げた。社会人野球出身の坂本亘監督(40)が基本から徹底し、就任3年目で開花。3季通じて24季ぶりの道大会進出となった。

 夏の円山に、伝統校が戻ってくる。春20度、秋21度の道大会出場を誇り、南大会は今回で29度目となる室蘭大谷が、08年4月に就任した坂本監督に率いられ、苦しい8年間のブランクを経て激戦区を突破した。

 代表決定戦でも生みの苦しみを味わった。初回、2回と連続で1失点。試合の流れは苫小牧高専がつかんでいた。ベンチで坂本監督は言った。「やってきたことしかやれない。できることだけやろうよ」。

 3回裏無死一塁、9番折舘勇士投手(3年)が1球で投前に送りバントを決めた。続く天羽(あもう)一真二塁手(3年)の中前打で一、三塁。天羽はすかさず二盗を成功させた。次打者松岡勇次遊撃手(3年)の時にスクイズを外されたが、三本間の挟殺プレーで敵失を誘い、三走横山雅駿中堅手(2年)が生還。松岡がきっちり中犠飛を放ち、同点に追いついた。

 チームは落ち着きを取り戻した。4回に4長短打で3点を奪い勝ち越すと、5、6回にも2点ずつを加えて突き放した。折舘投手も3回以降はわずか1安打投球、突けいるスキを与えなかった。

 喜ぶナインを見つめながら、坂本監督は目を細めた。社会人のNTT北海道の内野手として、都市対抗本大会を7度経験。監督就任当初は、選手指導の難しさを味わった。そんな時、同じ地区の駒大苫小牧に強いチームの原点を見た。キャッチボール、全力疾走が当たり前にできる。「できるまでやろう」とキャッチボールに半日費やしたこともあった。昨夏の新チーム結成時は1カ月半、全員でグラウンドの石拾い、寮の掃除を続けた。「何でこんなことばかりやるんだろう」。選手は疑問に思った。

 その意味がようやく分かってきた。「身の回りからしっかりやっていれば、違うんですね。結果が出るようになりました」と背番号13の主将、藤田和真内野手(3年)は優勝旗を手に喜びをかみしめた。「早く試合をやりたいですね」。指揮官の思いも円山に飛んでいた。【中尾猛】