<高校野球南北海道大会>◇3日◇室蘭地区代表決定戦

 白老東が古豪苫小牧工を3-1で退け、創部24年目で春夏秋を通じて初の全道大会出場を決めた。プロ注目の146キロ右腕、平田晃基遊撃手(3年)は右ヒジ痛で先発回避したが、代わってマウンドに立った弟隆二投手(2年)が1失点完投勝利。兄も3回に先制点をたたき出し、弟を援護した。

 弟隆二が最後の打者を中飛に仕留めると、両手を高々とV字に突き上げた。遊撃からは兄晃基が躍り上がるように走ってきた。主将の樽本英知捕手(3年)もまっしぐらに殊勲の投手に向かった。ナインがマウンドの隆二を取り囲んだ。緊張感から解き放たれた隆二は、顔をおおって泣き崩れた。泣くもの笑うもの入り乱れ、皆が初めての円山進出を喜んだ。

 苫小牧工との代表決定戦を控えた2日夕、白老東の笹原明男監督(42)は右ひじ痛を抱える晃基を呼び「お前の腕のことを聞く。投げられるか」と確かめた。晃基は「申し訳ありません。厳しいです」と答えた。すぐ隆二が呼ばれ、先発を指示した。「行けます」とは言ったが甲子園春5度、夏1度出場している古豪との大一番、不安を胸にマウンドに向かった。

 隆二は「心臓ばくばくでした」と言うが、気迫で立ち向かった。毎回走者を背負いながら、失点は6回裏の1点のみ。最少失点で踏ん張った。隆二の奮闘にバックも応えた。3回表2死一塁で晃基が左中間を割る適時三塁打で先制点。8回には福士晶左翼手(2年)が適時打で大きな1点を加えた。1週間前に覚えたツーシーム、スライダー、カーブ持てるものを出し尽くした。9安打を浴びながら、131球目に勝利をつかんだ。晃基は「弟はすごい。制球がいいし、気持ちで負けていなかった」と称賛した。

 過去3度屈していた代表決定戦の壁を突き破り、円山の土を踏む。晃基は右ひじ痛の影響で1日の鵡川戦から投球もできない状態で、19日開幕の南大会に間に合うか微妙だ。それでも隆二は言った。「僕の専門は内野手、円山のマウンドは兄に任せます」。【中尾猛】