<高校野球広島大会>◇10日◇1回戦

 第92回全国高校野球選手権広島大会が10日、マツダスタジアムで開幕した。甲子園通算26勝の三原新二郎監督(69)率いる山陽が、福山誠之館との開幕戦を7-1で制した。4-1の9回に3点を加え、末兼(すえかね)隼投手(3年)-中川皓太投手(2年)の継投で逃げ切った。94年以来16年ぶりの甲子園に向け、力強く第1歩を踏み出した。

 勝利への執念は衰えない。昨年大会8強の福山誠之館との開幕戦を制した三原監督は、喜びに浸ることなく試合を振り返った。「開幕戦だったし、アップの時間も少なく緊張もあった。勝てて良かった。ただ、開幕戦は先攻に限る」。

 名将は重圧によるミスが勝負を左右すると読んだ。先頭の吹藤光捕手(2年)が遊撃内野安打で出塁すると、次打者が確実に送りバントを決める。死球も絡み2死一、二塁から森川丈太郎外野手(2年)の中前適時打で先制すると、さらに死球で得た2死満塁のチャンス。浮足立つ相手先発から上田大内野手(3年)の中前打で二者生還。「あれが大きかった」。9回にも相手のミスを突く走塁で勝負を決めた。

 同監督にとって、開幕戦は京都西(現京都外大西)を率いて挑んだ87年センバツでの海星(長崎)戦以来と言う。当時も先攻で5-3で勝っている。「(伊豆大島の)三原山が爆発した翌年だったからね。よく覚えているよ」と苦笑い。23年ぶりのこの日はじゃんけんに負け後攻を取られたが、望むところだった。

 順当に勝ち上がれば、優勝候補の第1シード広島工との3回戦が行われる20日に70歳を迎える。だが「8月20日まで負けませんよ」と鼻息は荒い。京都外大西を率い勇退決意で臨んだ05年夏の甲子園。駒大苫小牧(南北海道)との決勝が8月20日だった。敗れはしたが、1年生の本田拓人(関西独立リーグ明石)を守護神に大抜てきし準優勝。自らのマジックで花道を飾った思い入れのある日だ。

 さえる投手起用は現チームにも通じる。入部直後に「捕手と投手の両方できるようになれ」と監督に才能を見いだされた元捕手の末兼(すえかね)隼投手(3年)が先発し、8回2/3を4安打1失点。「監督に恩返ししたかった」と喜んだ。また「投げさせたかった」という中川皓太投手(2年)を、今後をにらんで6点リードの9回2死一塁から登板させ、最後を締めさせた。甲子園通算26勝(16位タイ)の名将とともに山陽が最高のスタートを切った。【佐藤貴洋】