<高校野球兵庫大会>◇14日◇1回戦

 東洋大姫路が3年ぶりに夏の初戦を突破した。0-1で迎えた9回裏1死二、三塁から5番石井雅之右翼手(2年)が左中間へ逆転サヨナラ二塁打。科学技術を2-1で破った。77年夏の全国制覇を誇る名門が夏の初戦連敗を2でストップ。4年ぶり12度目の代表へ、劇的な第1歩を踏み出した。

 一塁側ベンチから、涙まじりの絶叫が聞こえる。0-1の9回裏1死。四球、敵失でつないで二、三塁。東洋大姫路の2年生5番石井は腹を決め、左打席に入った。「3年生の声がすごくて。何でも振ろうと思っていました」。初球。外角高めの直球。打球は左中間を破った。堀口雅司監督(44)は泣き出した。「東洋がこんなんやったらあかんのですが…」。3年ぶりの夏初戦突破に、四十男の丸刈り頭が震えた。

 夏の兵庫大会で2年連続初戦敗退-。悪夢の余韻に苦しんだ。安打は初回先頭の中川翔生主将(3年)の左中間三塁打と石井のサヨナラ打、最初と最後の2本だけ。2年右腕・原樹理が最少失点で踏ん張ったが、1、3回は満塁、6、7回も三塁に走者を背負った。「硬かった。まさかここまで…」と中川主将が絶体絶命の展開を振り返った。

 「いろんなことがありました。2年続けて夏に負けて。『夏の東洋』と言われる学校で、今の3年は1勝もせんまま来て…」と堀口監督。夏の勝利を知らない3年部員の中で、不協和音があった。6月中旬、メンバー外濃厚な部員中心のBチームと、ベンチメンバー中心のAチームがガチンコ練習試合を行った。Aチームが2-1で辛勝した。「『おれら、もう悔いはないから』と言ってくれた。うれしかった」と中川主将。今夏3年のベンチ入りは記録員2人を含め11人、サポートに徹するベンチ外は15人。土壇場で思いは1つになった。

 昨秋は県大会4強。今春のセンバツに出た神港学園に0-8でコールド負けしたが、地力はある。「本気で上位を目指したい。ウチは力はない。でも、意地があります」と堀口監督。夏の甲子園出場は全国制覇した77年を筆頭に11度。「夏の東洋」がやっとトンネルを抜け出した。【加藤裕一】