<高校野球広島大会>◇16日◇1回戦

 復活の夏が幕を開けた!

 第92回全国高校野球選手権広島大会は16日、1回戦16試合を行った。呉市二河球場では甲子園優勝7回を誇る広島商が安芸南を10-0の5回コールドで下した。エース佃勇典(3年)が、5日連続雨天順延の影響を感じさせない活躍。5回を無失点で投げ抜き、打ってはコールドを決定づける適時打を放った。名門が6年ぶりの聖地へ、1歩を踏み出した。

 5日連続雨天順延となった試合で、佃がアッサリと快勝を決めた。9-0の5回2死二、三塁で左中間を深々と破り、コールド決定の10点目をたたき出した。投げては二塁を踏ませない2安打ゼロ封。切れ味鋭い変化球を織り交ぜ6三振を奪った。広島前田健のピッチングを参考にする右腕は「去年は初戦に投げたが、ふがいない内容だったので」と大勝発進に慢心せず。エースの自覚をにじませた。

 打線も佃を援護した。先発唯一の2年生、井上福太郎外野手が2回2死満塁で先制の2点二塁打を放つと、4回には2点三塁打と4打数3安打4打点の大活躍。負けじと4番の和田恭佳一塁手(3年)も4回に「ヘッドがすんなり出た。行ったと思いました」と満塁弾で主砲の存在感を発揮した。8四死球に絡め、得点を重ねる機動力も見せつけた。

 佃は甲子園と縁がある。母知恵さん(42)の弟、広本剛士さんがいた広島商が出場した92年センバツの時だ。知恵さんが応援するアルプス席で、しゃもじの音が響く度に「胎内にいた勇典が反応している感じがした」(知恵さん)と言う。数カ月後、3416グラムで無事に生まれると「あえて細い道を通らせたりしましたよ」と、普段の生活から身体能力を高める習慣を身に付けさせた。

 入学時は投手と外野手。昨夏の広島大会後に27年ぶりに復帰した桑原秀範監督(63)に昨冬、投手専念を直訴した。この日の活躍に「佃は制球が良かった。だが、当然今後も状態が上がってくれないとね」と桑原監督も期待を寄せる。

 乗り越えなければならない壁は、宿命のライバル広陵だ。2年前は準々決勝で3-15(6回コールド)の大敗、昨年は準決勝で1-2と惜敗した記憶は頭から離れない。互いに勝ち進めば決勝で対戦する。「広陵を倒したい」と佃。今夏こそ、名門復活の夏にする。【佐藤貴洋】