<高校野球福島大会>◇19日◇4回戦

 8強に県立高が7校残った。光南は背番号11の安斎航投手が、5回 2/3 を3安打1失点と好投し平工を5-1で下した。

 闘志むき出しで立ち向かった。「っしゃー ! 」。光南の安斎はピンチを乗り切るたびに、ほえる。「自分はムードメーカーなので」。チームでの役割を知っている男は、マウンドで1度も弱気を見せなかった。直球は130キロ台前半と決して速くない。それでも気迫で凡打の山を築いた。

 姉5人、兄1人の7人兄弟の末っ子として育った。衣類もおもちゃも野球道具も「お下がり」ばかりだった。そんな安斎が高校入学式の日、兄慶さん(24)にスポーツ店へ誘われた。「好きなグラブを選べ」。兄からのサプライズ。遠慮がちに1番安いものを持っていくと「なめんな」と一喝された。本当に欲しかったものを持っていくと、何も言わずに買ってくれた。「初めて新品を手にした。大切にしています」。

 試合でしか使用していない宝物を身に着けてのマウンドだった。2年連続の8強では“兄孝行”にならない。4年ぶりの甲子園出場を報告したい。【湯浅知彦】