<高校野球南北海道大会>◇20日◇1回戦

 函館工が6-0で函館稜北との“函館ダービー”を制し、地区からのチーム連続無失点を4試合35イニングに伸ばした。本来は三塁手で1番打者の岩田将平が6回2/3を5安打、救援した砂子田祥太(ともに3年)も2回1/3を1安打に抑えて無失点で継投した。

 函館工がエース不在の危機を乗り越えた。覚悟を決めて臨んだ函館稜北との一戦を、力を合わせてものにし、ナインは声を張り上げて勝利の校歌を円山の杜(もり)に響かせた。

 地区全3試合26回を無失点で投げ抜いたエース秋山翔夢(しょうむ=3年)が予選後、下半身に不安を訴えた。7月上旬に出た医師の診断は、22日までの登板禁止令。チームは試合前日に最終ミーティングを行い、秋山抜きで戦うかを話し合った。出した結論は「秋山抜きで戦い、次の試合につなごう」だった。

 先発したのは、昨秋の地区予選以来305日ぶりの岩田だ。「緊張はしませんでした」と振り返ったが、初めての円山のマウンドで球は浮き、いきなり先頭打者に中前打を浴びた。だが、すかさずけん制で刺した。続く打者にも中前打を許したが、以降は低めに球を集めて後続を断った。4、5回にも安打と失策で出塁した走者をけん制で刺した。自らリズムをつくると、3回にはチーム初安打を右前に放ち、先制点につなげた。7回表2死で四球を与えたところで任務終了、砂子田にバトンを渡して本来の三塁に戻った。

 「秋山はいなくても、後ろに砂子田がいたので安心でした」と岩田。期待にたがわぬ仕事をやってのけた。秋山も「ありがたく思う。次は自分」と22日の北照戦に懸ける気持ちを口にした。

 エース抜きの初戦を、1番打者・投手起用のまれな作戦で勝ち上がった。「岩田起用は必然。練習試合でも一番投げているし、打順は変えたくなかった」と小早川賢輔監督(53)。勝負の一手が想定以上にうまく進み、声も弾んだ。6点リードの9回には三振を取ろうとするバッテリーに「打たれろ」サインを出して緊張をほぐしたり、ピンチで気持ちを乗せたりとベテラン監督らしさを随所に見せる。昨夏は準決勝で優勝した札幌一に4-6の惜敗。63年以来の甲子園へ、大きな1勝を挙げた。【中尾猛】