<高校野球広島大会>◇21日◇3回戦

 広陵・中井哲之監督(48)が鬼采配でナインに気合を注入した。第92回全国高校野球選手権広島大会はこの日、3回戦8試合を行った。今春センバツ4強の広陵は三次青陵に9-0圧勝。前日の広島市工戦8-1勝利に続く連日の7回コールド勝ちにも、名将はチーム内に漂う「慢心」を不安視して厳しく律した。甲子園通算27勝の名将が、心を鬼にしてチームを頂に導く。

 仏の顔も3度までだ。連日のコールド勝利の余韻はどこへやら、中井監督はチーム内にまん延する「慢心」にクギを刺した。

 中井監督

 ピリッとしていない選手がいる。カツを入れないと。

 甘えを捨て、競争心を持て-。指揮官はこの日も徹底していた。球場に出発する前、朝の学校だ。有原航平投手(3年)を学校の監督室に呼んだ。センバツでNO・1右腕の称号を勝ち取った絶対的エースから「まだ投げないだろう」との雰囲気を感じ取っていたからだ。普段は球場に向かうバス車中でスタメンを発表するが、この日は違った。異例の監督室招集で「今日はお前で行くぞ」と先発を命じるとともに、エースの自覚を促した。

 意図はオーダー表にも示した。センバツで12打数6安打3打点と勝負強さを発揮し、4強入りに大きく貢献した蔵桝孝宏外野手(2年)が、まさかのベンチスタート。鬼采配は続く。1回の攻撃だ。先頭の主将福田周平外野手(3年)の二塁打に、次打者が死球。いきなり無死一、二塁と絶好の先制機に三田達也外野手(2年)が送りバントを決められず、結局遊飛に。その後、併殺崩れの間に先制したが、最少得点に終わった原因はハッキリしていた。直後の守備から、三田と蔵桝を交代した。指揮官は甲子園サヨナラ打の三田を容赦なく下げた。

 中井監督

 なんだか自分は試合に出て当然、と考えているのか…。僕の采配から「くそったれ!

 負けてたまるか!」と個々が感じ取ってくれれば良いんだけどね。

 指揮官の思いが通じたのか、9-0の7回コールド勝ち。センバツ敗退した4月1日以来の公式戦登板となった有原は、6奪三振の4回1安打ゼロ封と本気度の伝わる内容だった。中井監督は「さすがと言うか、モノが違った」とようやく目を細めた。センバツ4強も頂点ではない。頂に立ってこそ見える景色を、今夏こそナインに眺めさせたい。全国制覇2度の名将が、心を鬼にしてチームをけん引する。【佐藤貴洋】