<高校野球福島大会>◇23日◇決勝

 聖光学院が光南を3-0で下し、県勢初の4連覇を達成、東北6県のトップを切って代表の座を勝ち取った。背番号18の歳内(さいうち)宏明投手(2年)が、3安打12奪三振完封で5回の3点を守りきり、夏7度目の甲子園切符を手にした。一昨年の夏から続く「県内公式戦連勝記録」を51まで伸ばし、「県大会連続優勝」も7季まで更新した。数々の記録を手土産に聖地へ乗り込む。

 快晴の中を最後の打球が落ちてくる。板倉皓太左翼手(3年)がしっかりつかむ。ナインは砂を舞い上げて抱き合った。

 豪腕・歳内が「聖」地へと続く道に「光」を照らした。4回裏。先頭打者を142キロの直球で、続く2人は129キロのスプリットで三振に仕留めた。「特にスプリットが良かった」と振り返るように、打者の腰が浮いてしまうほどのキレ。12三振のうち、10個を「魔球」で奪った。

 182センチ、76キロと立派な体つきだが4歳までは少食。食事は牛乳と果物しか取らなかった。不安を感じた母美佐子さん(42)が、保健所まで相談に行ったほどだった。成長とともに食も進むようになり、悩みは解消。「今はマウンドの姿を見るのが不安。みんなに守ってもらって勝って欲しい」と親心で見守った。

 聖光学院は部員120人の大所帯。昨秋には、モチベーションの上がらない控え選手もいた。「これでは勝てない」。村島大輔主将(3年)は血尿が出るほど悩んだ。副主将の斎藤英哉や星祐太郎(ともに3年)にも相談。出した答えは「スタメン選手だけじゃなく、全部員の主将」でいること。控え選手の意見も積極的に聞いた。

 今大会前までベンチ外だった斉藤慧(3年)は「村島は誰とも同じように接してくれる」と話す。主将の気持ちをくみ、サブメンバーだけで集まる機会を何度も設けた。今春の東北大会期間中、「1人1人がチームのためにできること」を5時間以上も話し合った。考えがまとまらず、涙する選手もいた。今では応援にも手を抜く者はいない。

 全員が同じ方向を向き、県勢初の4連覇と県内公式戦51連勝を達成した。斎藤智也監督(47)は「この子たちを泣かせたくなかった。長い夏にしたい」。福島王者・聖光学院が「井の中のかわず」ではないことを証明するため、甲子園という「大海」に出てゆく。【湯浅知彦】