<高校野球愛知大会>◇23日◇4回戦

 明和が、延長10回に劇的なサヨナラスクイズを決め、誠信を3-2で破った。県内屈指の公立進学校が11年ぶりの16強進出だ。愛工大名電は、13安打の猛攻で豊川に10-3の7回コールド勝ちした。

 土煙を上げながら三塁ランナーの福間実内野手(3年)がホームに飛び込んできた。主将の伊藤圭祐内野手(3年)のスクイズが鮮やかに決まった。11年ぶりの16強進出-。ベンチから飛び出してきたナインの歓喜が弾けた。

 延長10回裏、誠信の守備の乱れなどで福間は三塁に進んだ。伊藤は「ずっと調子が悪く申し訳なかった。やらなきゃという気持ちだった」と、ようやくチームの勝利に貢献できたスクイズを興奮気味に振り返った。

 この回が始まる前には、控え選手も含め全員で手をつないで円陣を組んだ。「今まで1番つらかった練習を思い出せ!」。ナインを励まし、伊藤自身も気合を入れ直していた。

 昨年度は東大に10人、京大に23人合格という県内有数の進学校でもある。しかし、練習環境は決して恵まれたものではない。グラウンドは狭く他クラブとの共用。私学が保有しているような雨天練習場などもちろんない。練習時間も授業が7時限ある時は午後4時半から6時まで。学校側の方針で居残り練習などは厳禁だ。伊藤は「短い時間でも常に考える野球で問題に取り組んできた」と、創意工夫でここまで来たと胸を張った。ナインには、進学校にありがちな“ひ弱さ”は全くない。

 全国最多188校が頂点を目指す戦国愛知大会で、11年ぶりの16強入り。「まだ通過点です。目標は甲子園ですから」と伊藤は真顔で言った。1921年(大10)には、前身の明倫中が甲子園出場を果たしている。89年の空白を埋めるため、受験勉強に染まる日はまだ先にする。【坂祐三】