ナショナルズFAのブライス・ハーパー(左)とドジャースFAのマニー・マチャド
ナショナルズFAのブライス・ハーパー(左)とドジャースFAのマニー・マチャド

もしかしたら1995年以来のストライキが起こるのは、避けられないかもしれない。

最近、MLB周辺でそんな話が噴出している。理由はFA市場が2年連続で異常に停滞しているからだ。今オフFAの目玉だったブライス・ハーパー外野手(26=ナショナルズFA)とマニー・マチャド内野手(26=ドジャースFA)はキャンプインまで1カ月を切っても所属先が決まらず、大型複数年契約を得る選手も少なく、決まったとしても単年契約の選手が多い。しかし一方で、球団経営は今も収益を増やし続けている。メディアの中には「現在の労使協定が失効する2021年までにMLB選手会はストライキの準備をするべき」とはっきり提言しているものもある。

現状に憤慨しているのは選手だけでなく、代理人も同じだ。球界屈指の実力と名声を誇るスーパーエージェント、スコット・ボラス氏はニューヨーク・デーリーニューズ紙で「球界が史上最高の収益を記録しているのに4年連続で観客動員が減少し、球団は勝つことを目指さず再建にうつつを抜かす。3年前はステージ1のガンだったが、今はステージ2に悪化している」とMLBと経営側を批判。別の有力代理人は、水面下で経営側への対抗策を練っているという話もある。選手がMLB主催の行事参加をボイコットしたり、MLBが経営する専門テレビ局MLBネットワークのインタビューや出演を拒否するなどを提案し、選手間でひそかにメモを回しているそうだ。ストライキの可能性を口にする選手も多いという。

しかしもし本当にストライキにでもなったら、SNS時代に入って初めての米プロスポーツ界の労使決裂によるシーズン休止。過去と比べて計り知れないダメージを負う可能性もあり、慎重論も当然ある。

そんな折も折、プロスポーツ界の労使闘争を描いた映画が間もなくNetflixで公開される。野球界ではないがNBAプロフットボールを舞台に、闘争のため施設閉鎖の最中、1人の代理人が経営側と選手の間で板挟みになり翻弄(ほんろう)されるのだが、最終的にはプロスポーツ界のパワーバランスを完全に壊すような大変なことを起こすらしい。「High Flying Bird(ハイ・フライング・バード)」のタイトルで、スポーツ界を支配するのは誰か、支配すべきなのは誰かを考えさせられる内容だという。こんなタイムリー過ぎる映画が制作されるのは、MLBだけでなく他のプロスポーツ界でも同じような労使問題に直面しており、米国社会の縮図化しているという背景があるのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

大リーグ選手会のストライキに反対するボードを掲げるファン(2002年8月21日撮影)
大リーグ選手会のストライキに反対するボードを掲げるファン(2002年8月21日撮影)