メジャーはシーズン全日程が終了し、ストーブリーグに入りましたが、今オフは例年以上に“不透明感”が漂っています。言うまでもありませんが、今季はコロナ禍の影響で無観客試合だったこともあり、各球団の収益が大幅に減少。FA(フリーエージェント)市場の相場が読めない状況になっています。

先日、返答期限が締め切られた来季年俸1890万ドルとなるクオリファイングオファー(QO、約20億8000万円)は、ガウスマン(ジャイアンツFA)、ストローマン(メッツFA)の2投手が受託しましたが、バウアー投手(レッズFA)、ラメーヒュー内野手(ヤンキースFA)、リアルミュート捕手(フィリーズFA)、スプリンガー外野手(アストロズFA)は拒否。この特Aクラスにランクされる4人は、長期の超大型契約が見込まれるため、その動向はFA市場全体に影響を与えるといわれています。

ただ、今オフの場合、ヤンキースとゲリット・コール投手が昨オフに結んだ9年3億2400万ドル(約356億円)のような破格のオファーが飛び交う可能性は、かなり低いものとみられています。資金力に定評のあるヤンキースやドジャースにしても緊縮財政を強いられており、巨額のマネーゲームは避けるだろうと予想されています。となると、各球団は基本年俸をできるだけ抑えて、細かく、幅広いインセンティブを用意して対応することになるはずです。これに、早い時期でのオプトアウト(契約見直し)を加えるなど、例年とは異なる作戦が主流になるものとみられています。その一方で、代理人側が簡単に低条件で納得するはずもなく、ここ数年以上に市場全体の動きが緩慢になることが確実視されています。

ナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得したバウアーらの動きは、必然的に田中将大投手(ヤンキースFA)ら他の選手の交渉にも影響します。代理人側は各ポジションごとの相場を見極めて交渉を進めるわけですから、大物選手の行き先と条件が常に注目を集めるのは当然です。仮に市場内でにらみ合いが続き、停滞し始めると、越年する選手が続出する可能性も否定できません。

今オフにもポスティング制度でメジャー移籍を目指すとみられている日本ハム有原、西川ら日本球界の選手の場合、特Aランクの市場とは一線を画していますが、それでも無関係ではありません。ポスティングの場合、交渉期限が定められていることもあり、市場全体の動きや条件面を見極めるだけでなく、各球団の経営方針、戦術、戦略を分析した上で、ニーズに合った球団を探すことも重要になってきます。

ウインターミーティングなどの会議が中止となり、直接交渉の機会も限られる今オフ。FAを含めた移籍市場がどう動くのか、現時点ではまったく予想がつきません。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)