3月のWBCに出場する全20チームの代表選手が10日に発表されました。最大の注目は、ホスト国として大会連覇を狙う米国です。

メンバー30人には、マイク・トラウト外野手(31=エンゼルス)ら4人のMVP受賞者を筆頭に、21人にオールスター選出歴がある超豪華な顔ぶれです。まさに大会史上最強の「ドリームチーム」と言えます。

米国代表の特長はパワーとスピード、鉄壁の守備にあります。昨年ナ・リーグ本塁打王のカイル・シュワバー外野手(29=フィリーズ)を筆頭に、昨季30発以上の大砲7人を擁します。また、セドリック・ムリンス外野手(28=オリオールズ)はじめ、2桁盗塁の選手も8人。さらに、各ポジションともゴールドグラブ級の名手がそろいます。

投手陣を見ると、今大会もそうですが、米代表には共通する傾向があります。先発投手陣には本格派より、制球力ある技巧派を多く集めています。春先は調整時期ということもあり、速球派には故障のリスクがあります。また、WBCには球数制限があるため、早いカウントで打ち取るタイプが好まれます。元巨人のマイルズ・マイコラス(34=カージナルス)らは、理想的なタイプです。

そして、決勝の舞台は毎回、「投手有利な球場」という理由もあるでしょう。準決勝と決勝の開催地は、フロリダ州マイアミにあるマーリンズの本拠地ローンデポパーク。外野が広く、投手有利な球場です。そのため、パワーよりスピードと守りに重点を置こうとします。

ともに順当に勝ち上がれば、準決勝は「日米決戦」となります。ムリンスの絶妙なバント、ムーキー・ベッツ外野手(30=ドジャース)の走塁、トレイ・ターナー内野手(29=フィリーズ)の俊足などは脅威です。また、現役最高の捕手と称されるJ・T・リアルミュート(31=フィリーズ)は、日本のお家芸ともいえる機動力野球を封じてくるでしょう。

ブルペン陣もパワー投手がそろいます。中継ぎと抑えの8人は全員が奪三振タイプです。しかも、大舞台の大事な場面にも動じることなく、実力を発揮できる30歳以上のベテランばかりです。さらに、右腕アダム・オッタビノ(37=メッツ)のスライダー、右腕デビン・ウイリアムズ(28=ブルワーズ)のチェンジアップなど、各投手が個性的なウイニングショットを持っており、ゲーム終盤に得点を奪うのは難しそうです。

さらに特筆すべきは、シーズン開幕を見据えた時期のメンバー構成です。本来ならオープン戦の期間でもあり、各選手に一定の打席数や守備機会を与えることが必要です。そのためレギュラーを固定せず、対戦相手や試合状況に応じてメンバーを入れ替えてくるでしょう。各ポジションにオールスター級の実力者を複数人用意しており、守備の要である捕手と遊撃手は3人ずついます。また、ジェフ・マクニール二塁手(30=メッツ)やベッツら内外野守れる選手もいます。まさに、ドリームチームが2つできそうなほど、層の厚い陣容です。

また、右打ちのトレバー・ストーリー内野手(30=レッドソックス)に代わって、左打ちのマクニールが代表入り。前大会までと違って、左右のバランスが取れた攻撃力にもなりました。これで、ツープラトンシステムを使うことも可能です。そういう意味でも、最も投打のバランスが取れ、完成されたチーム構成となっています。

当然ですが、米国は今大会も優勝候補の筆頭に挙げられています。その最強軍団に対し、エースのダルビッシュ有(36=パドレス)、投打二刀流の大谷翔平(28=エンゼルス)らを擁する侍ジャパンがどう挑むでしょうか。これまでの対戦成績は日本の1勝2敗で、準決勝に限れば1勝1敗。三たび準決勝での再戦実現を祈りながら、WBC開幕を待ちたいと思います。(大リーグ研究家・福島良一)(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)