今週、MLBの多くのチームで経営が揺れ動くことになるかもしれない。バリースポーツという名称でローカルテレビ中継を行ってきたメディア企業、ダイヤモンド・スポーツグループ(DSP)が放映権料の支払い猶予期限だった5月31日の前日、30日にパドレスへの支払いを行わないことを決定、放映権を返還したのである。

MLBでは一部の全米放送などを除き、各チームがローカルテレビ中継の権利を管理、販売しており、それが大きな収入源となってきた。ヤンキースやメッツ、レッドソックスといった有力チームは独自にローカルネットワークを所有しているが、地元ケーブルテレビ局と契約しているチームが多い。そんな中でひときわ大きな存在だったのがDSPだったのである。これまでパドレス、エンゼルス、ガーディアンズ、ツインズなどじつに14チームと契約、放映権を所持していたのだ。

そのDSPが昨今のケーブルテレビ離れもあって経営不振に陥り、3月に日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条を申請したのである。この破産手続き中、ダイヤモンドバックスやレンジャーズ、ガーディアンズなどへの放映権料支払い期限が次々と訪れ、支払いが滞る事態となった。支払い期限には猶予期限があり、パドレスとレッズには支払いが行われたが、ダイヤモンドバックスとレンジャーズは破産判事に動議を起こし、放映権料50%を支払う命令が出されている。

そして30日、DSPはパドレスへの支払いを行わず、放映権返上となってしまったのだ。これに対し、MLBはただちに試合中継の制作と配給を引き継ぐことを発表。ケーブルネットワーク大手2社と衛星放送、動画配信サービスで「サンディエゴ・パドレス」と名付けたチャンネルを新設し、6月4日までは無料で、以降は月20ドルの有料で中継を行うとしている。これによりパドレスファンが試合を見られないという事態は避けられることとなった。

ただ前述のようにDSPは14チームと契約しているのだ。特に8チームは破産申請の対象となっており、うちエンゼルスとレッズ、カージナルスなど6チームはチームも出資し、ジョイントベンチャーとして運営されているため状況は複雑だ。権利が返上された場合、MLBはパドレスと同様に引き継ぐとしているが、裁判など進展は不透明なままである。

またMLBが引き継いでもこれまでのような大きな収益が各チームにもたらされるかもわからないし、チームの独立運営という点でもどんな影響が出るかもわからない。シーズンはまっただ中だが、頭を抱えている経営陣も多そうである。