DeNAからポスティングシステムでカブス入りする今永昇太投手(30)の入団会見が12日(日本時間13日)、シカゴ市内で行われた。新背番号「18」のユニホームに袖を通すと「Hey Chicago!」「Go Cubs Go」などと英語であいさつし、地元ファンの心をつかんだ。4年総額5300万ドル(約76億9000万円)をベースに、最大5年総額8000万ドル(約116億円)となる契約を交わした日本の左腕エースは、新同僚の鈴木誠也外野手(29)と一緒に、16年以来の世界一へ挑む決意を明かした。

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「投げる哲学者」は、緊張するはずのお披露目会見でも、シャレっ気たっぷりだった。カブス今永の第一声は「Hey Chicago!」。ドッと沸く会場の反応を見ながら、さらに英語で自己紹介を続け、最後はカ軍ファンの勝利時の愛唱歌「Go Cubs Go」のフレーズで締めくくり、喝采を浴びた。

10球団とも言われた「争奪戦」は、米11日(同12日)の交渉期限寸前まで流動的だった。その一方で、今永にとって、シカゴは印象度抜群の街だった。ポスティング正式申請前の昨年11月、代理人関係者らが拠点とすることもあり、同地を訪問。NHLブラックホークスの試合を観戦したほか、NBAブルズの本拠地ユナイテッドセンターでマイケル・ジョーダンのユニホームを購入するなど、オフ期間を楽しんだ。

その後、クリスマス前後にも再訪問。ただ、その間、交渉は具体的には進展しなかった。「カ軍がオファーを出してくれたらと言ったことがあったけど、ほぼジョークのような感じだった。その時点でカ軍の可能性はなかったので」。大谷翔平、山本由伸(いずれもドジャース)を逃したレッドソックス、ジャイアンツなどが積極的に接触する中、今オフのFA市場で沈黙を保っていたカ軍が、期限ぎりぎりにオーナーの承諾を取り付けてオファー。球団内でも限られた編成トップだけが動く大逆転劇で「争奪戦」を制した。

NPB時代から親交のある鈴木には交渉中は相談せず、移籍決定後に連絡した。「自分のことのようにうれしがってくれて、興奮していますと言ってくれた。彼と一緒に日本人のチームメートでカ軍を盛り上げていければ光栄に思います」。

英語でのあいさつは、過去数日間に反復練習。時折見せたにこやかな表情も、地元ファンのハートをつかむのに十分だった。「プライベートもフィールド上でも、ファニー・ガイ(おもしろいヤツ)でいられるように、いつも心がけています」。しっかりと笑いを取りつつ「自分は未完成」「日々勉強」と謙虚な言葉を並べた。先発ローテーションの2、3番手として期待されている左腕は、緩急自在な投球術と同じように、「哲学者」の雰囲気をまとっていた。