本当に楽天のことが好きなんだなあ。そう思ったのを覚えている。

 石塚友祐さん(25)に初めて会ったのは、11年の秋だった。岡山・倉敷キャンプでのこと。当時は、まだ学生だった。授業の一環で見学に来ていた。楽天担当だった私は、選手のアップを一緒に見ながら、彼の真っすぐな思いを聞いた。あれから約3年半。石塚さんは念願かない、日本テレビでスポーツ中継に携わっている。

 11年の開幕戦で嶋のホームランボールを捕ったことがきっかけで、スポーツ報道の世界を志したという。東日本大震災から4年を機に、あらためて話を聞いた。「被災地の人に、嶋さんやイーグルスの皆さんが元気を与える中でのパイプ役になりたいし、被災地の人に元気を与える一助となりたい」。真摯(しんし)な思いを語ってくれた。

 新聞とテレビで形態の違いこそあれ、スポーツを伝える点は同じ。私は、気がつけば10年近く記者をしている。日々の仕事で忘れがちな初心を思い出させてくれた。原点に立ち返ろうと思わせてくれた。

 震災のことは、思い出したくない方も大勢いらっしゃるだろう。今回の連載に登場する方々は、それぞれ置かれた立場が違う。きれいごとでは済まないこともある。それでも、あえて「3・11」から前に進む姿を追った。読者の皆さんが、そこから何かを感じていただければうれしい。石塚さんのように、その一助となりたい。【古川真弥】