抜てきにバッチリ回答だ。5年目で初の開幕1軍入りを果たした日本ハム谷口雄也外野手(22)が、「8番DH」で先発出場。5回、2-1と逆転してなお1死三塁の好機に、楽天則本から右犠飛を放ち貴重な追加点を挙げた。「かわいすぎるスラッガー」として脚光を浴びてきたが、開幕戦からブレークの予感を漂わせる活躍を見せた。

 球春にベビーフェースから笑顔の花が満開となった。谷口が大抜てきに応えた。逆転した直後の5回1死三塁。初球のフォークを、すくい上げた。右犠飛で3点目。試合の流れをたぐり寄せる、大きな追加点をもたらした。「使ってもらえることに結果で応えたかった」。栗山監督から難敵・則本攻略の刺客に指名された。初の開幕スタメンで大仕事を果たした。

 プレッシャーをはねのけた。昨季、則本との対戦成績は9打数6安打で打率6割6分7厘。「打席に入るまで、僕はとても怖かった。今年は分からないですから。でも、いい結果を残せて良かった」。逆に重圧だったが、3回の第1打席も芯でとらえた打球の一直。年をまたいでも、相手エースとの相性は良かった。

 愛くるしい笑顔の裏には熱い思いを持つ。プロでの活躍を誓った、亡き親友がいる。愛工大名電で同級生部員だった徳浪康介さん。3年に進級する直前の10年2月。愛知・春日井市内にある合宿所から学校までの約10キロをランニングで登校中の悲劇だった。

 最後尾を走っていた徳浪さんが交通事故に遭った。翌日、帰らぬ人となった。

 エースを目指し、練習熱心な姿勢を尊敬していた。最後の夏、谷口は形見のバットを使い続けたという。プロ入りが決まると、徳浪さんの両親から墓石でつくられたボールを渡された。ともに目指した甲子園を連想させる「康思園(こうしえん)」と彫られていた。今でも大事に手元に置く。地元の三重に帰省した際は墓参りを欠かさない。「あいつのためにも…」という思いが、厳しい世界を生き抜く原動力だ。

 女優剛力彩芽とそっくりなビジュアル面が先行も、着実に実力を伸ばしてきた。「この先も期待に応えたい」。内に秘めた使命感とともに、谷口が幸先よいスタートを切った。【木下大輔】