西武岩尾利弘投手(27)が連続三振の“快記録”を打ち立てた。救援3試合で8連続奪三振中の右腕は日本ハム戦の7回2死一、二塁で登板。レアードから空振り三振を奪った。複数試合をまたいでの9連続三振はあくまでも参考記録だが、阪急梶本、東映土橋のプロ野球記録と同じ数になった。試合には敗れたが、まだ実績の少ない岩尾がステップアップへの勲章を手に入れた。

 色気はなかった。岩尾はアウトを取ることに没頭した。7回2死一、二塁。8連続三振中でレアードを迎えた。フォークのような縦変化の自称ツーシームで空を切らせ、3球三振。複数試合での登板で公式記録にはならない。だが1950年代の更新が困難なプロ野球記録に数字上で並んだ。「(記録は)何も考えないようにした。三振より失点の方が嫌なんで。でもうれしいです」と初々しく快挙をかみしめた。

 まだ地位は確立されていない。点差が開いた場面での登板が主で、記録を立てた4戦も、いずれも3点差以上を追いかけての登板。8連続三振でひそかに注目を集め始めた前日21日も「記録とかよりも1回、打たれたら2軍に落ちてしまうので」と危機感が上回った。

 だが偶然ではない。昨季は20イニングで21奪三振。今季も3月22日のDeNAとのオープン戦で7連続三振をマークした。2年前、渡辺SD(当時監督)からフォークを教わった。「指が挟まらなかったので、幅を縮めて縫い目にかけたら落ちるようになった」。プロでのし上がるための武器を手に入れた。

 三振を奪う醍醐味(だいごみ)を南半球で知った。2年前のシーズン後にオーストラリアでのウインターリーグに参加。三振を奪うと観衆から拍手喝采を浴びた。「点差が開いていても三振を取ると大喜びしてくれた。自分も三振を取れる投手なのかなと思った」。言葉は分からない。だが興奮してくれているのは肌で感じた。ドクターKの原点だ。

 8回は先頭の近藤が左飛で惜しくもメジャー記録の10連続には届かなかった。だがその後も2者連続三振。試合後の田辺監督の「今度は緊迫した場面でどれだけ投げられるのか試したい」との言葉を伝え聞き「怖いですね」と苦笑いした。豪快な記録と名もなき右腕の人柄のギャップは、まだ存在し続けている。【広重竜太郎】

 ◆岩尾利弘(いわお・としひろ)1987年(昭62)7月20日、大分出身。津久見、別府大から09年ドラフト3位で西武入団。13年5月14日、ヤクルト戦(神宮)に救援でプロ初勝利。通算31試合登板で2勝0敗、39奪三振。179センチ、80キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸は870万円。

 ◆連続奪三振 日本のプロ野球で試合をまたいだ連続奪三振記録は不明。1試合では57年梶本隆夫(阪急)と58年土橋正幸(東映)の9連続がプロ野球記録。オールスターでは江夏豊(阪神)が71年第1戦で1試合最多の9連続を奪った。大リーグの1試合最多は70年シーバー(メッツ)の10個。03年には救援のガニエ(ドジャース)が4試合で10連続を記録している。