高卒2年目が、大仕事をやってのけた。本拠地で初スタメンのソフトバンク上林誠知外野手(20)がロッテ戦の6回、プロ9打席目の1号を逆転のグランドスラムで決めた。初アーチが満塁弾は球団史上5人目(外国人除く)だが、上林は最年少で記録。優勝マジックも23。日替わりヒーローの出現が、また優勝への勢いを加速させた。

 記念のホームランボールを手に、初めて上がったお立ち台で無数のフラッシュを浴びると、まぶしそうに目を細めた。プロ2年目の上林が、ロッテ先発イ・デウンの直球をしとめ、プロ初となる見事な右越え逆転満塁本塁打。球団から将来の主軸として期待される20歳が、ひと振りで試合を決めた。

 「向こうはカウントが悪かったし、直球でくると思って狙っていた。手応えはあったが、わけが分からず、最初は全力で走った。何が起こったか分からず、うれしさを表現できなくて…」

 6回2死満塁。3-1からの5球目、直球を狙いすまして強振した。4回は2死満塁のチャンスで一ゴロ。リベンジに燃えていた。3球目の147キロ直球に空振りしたが「ちょっと振りが大きかったのでコンパクトにいった」。2軍で打率3割3分3厘を放ち、ウエスタン・リーグ首位打者に立つ男は即座の修正力で対応した。

 22日には、仙台育英での3年間を過ごした仙台の地でプロ初先発するも、4打数無安打に終わった。「何とか初ヒットを打ちたかった」。この日の3回に念願のプロ初安打となる左前打。二塁を狙ってアウトとなったが、その積極性が後の打席で最高の結果を生み出した。

 今年5月に1軍に初昇格。札幌遠征では柳田、福田らに食事に誘われ、高級ウニに舌鼓を打った。ビジネスホテルに泊まることの多い2軍に比べ、1軍宿舎のベッドは広く「これが1軍か。こんなにうれしいことはない」と、1軍への思いを高めていた。

 2度目の1軍昇格となった仙台では、1月に自主トレにも同行させてもらった内川から「1軍では相手投手にあわせて長くボールを見ることが大事」とアドバイスを受けた。今回の昇格はエース摂津に登板機会がなく、期間限定でめぐってきたものだったが、少ないチャンスを逃さなかった。

 工藤監督も「すごかった。彼は今日の試合を一生忘れることはないと思う」と大喜び。背番号51をつけ、イチローに憧れる上林。1日に20歳を迎えたばかりの男が、プロでの大きな1歩を踏み出した。【福岡吉央】

 ◆上林誠知(うえばやし・せいじ)1995年(平7)8月1日、さいたま市生まれ。小1から野球を始める。土合中では浦和シニア、3年春に全国制覇。仙台育英(宮城)では1年秋から4番。2年夏から3季連続甲子園出場。13年ドラフト4位で入団。1年目は内野手に挑戦し、今季から本職の外野に。右投げ左打ち。185センチ、78キロ。

 ▼ソフトバンク上林がプロ初アーチとなる満塁本塁打。外国人選手を除き、プロ初本塁打が満塁弾は昨年10月2日の梅田(西武)以来57人目(パ=18人目、セ=23人、1リーグ=16人)。ソフトバンクでは前身球団を含め41年松本光三郎、81年吉田博之、91年安田秀之、97年井口忠仁(現ロッテ井口資仁)に次ぎ5人目。1号が逆転満塁弾は安田に次いで球団史上2人目だ。上林は今月1日に20歳になったばかり。20歳0カ月での満塁本塁打は、81年吉田の20歳9カ月を上回る球団史上最年少となった。