ソフトバンク工藤公康監督(52)が亡き友の墓前に日本一を報告した。15日に佐賀県唐津市内に足を運び、ダイエー時代に親交があり31歳の若さで亡くなった故藤井将雄氏の墓参りをした。3連覇を目指す来季に向け、自らの進化を誓い、横浜市にある自宅に戻った。

 優勝旅行の帰国から一夜明け、工藤監督は西に向かった。唐津市に弟分だった藤井氏が眠る墓がある。手を合わせ、日本一を報告した。「来たぞ、ってね。なかなか行けなかったから。アイツと一緒に強くなりたい、と思ってやってきたから。本人はどう思っているんだろね」。その時、夜中から降り続いた雨は止んでいた。就任会見翌日の昨年11月2日以来となる墓参りだった。

 FA移籍でダイエーに加入。チームを強くしたい一心で、時には同僚に厳しい言葉を投げかけた。孤立しかねない状況で、良き理解者として間に入ってくれた。2人の思いは99年の日本一で実を結んだ。しかし翌年に藤井氏は帰らぬ人になる。葬儀に参列した工藤監督は右肩の遺骨を譲ってもらった。強いホークスを継続させるのは、亡き友との約束でもあった。だからこそ、3連覇のかかる来季に向け、自らの向上にも余念がなかった。

 「俺にも課題はいっぱいある。采配もそうだし、選手交代ももっと考えないと。ファームは筑後で遠くなるが、自分の目でも見たい。選手はより高い目標を設定している。どれだけ協力してやれるか」。日本一で達成感に浸ることはない。現状維持を何よりも嫌う。「また同じように、選手と対話し、より深く知りたい」。この日福岡を離れ、横浜市にある自宅に戻った。年末年始は米アリゾナで英気を養う予定。亡き友を思い、激動の1年は1つの節目を迎えた。【田口真一郎】