巨人の“タイガーマスク”が、復活を遂げる。巨人長野久義外野手(31)が、キャンプ最終クール3日目を迎えた22日、元気はつらつにグラウンドを駆け回る姿が目立った。「体が元気なので動ける時に動こうと思って」と殊勝なコメントとは対照的に、この日も外野手では異例の内野での早朝特守を行うなど、ハードに体を追い込む。

 胸の中に秘めるのは、昨年の雪辱だった。オフに右肘、右膝の手術を受け、驚異の回復で開幕スタメンに名を連ねたが、打率は自身ワーストの2割5分1厘。「僕に力がなかっただけです」と否定するが、本来の姿ではなかった。「悔しい思いをしたので、必ず優勝して、高橋監督を胴上げしたいです」とオフから何度も繰り返した。

 新選手会長として、粋な計らいで周囲の心と体を温めた。宮崎キャンプ第2クール初日の6日だった。その日は気温が低く、強風が吹き荒れ、報道陣や関係者が寒さに凍えた。「マスコミの方やゲストの方が本当に寒そうだったので」と約1000個分のカイロを自費で購入。翌日の7日から、関係者受付で人知れず配布された。

 漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人のように、名は伏せられた。周囲には「僕じゃないですよ~」と全否定。長野らしさが詰まった優しさに、事情を知る関係者は胸を熱くさせた。高橋監督からはキーマンの1人に指名されたが、グラウンド内外で“ホット”な男は、その期待に応える。【久保賢吾】