プレーバック日刊スポーツ! 過去の9月22日付紙面を振り返ります。1996年の1面(東京版)は中日星野監督に審判暴行事件で制裁金100万円でした。

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 中日星野仙一監督(49)がセ・リーグに公開論争を求めた。20日の巨人戦終了後に、東京ドーム三塁側通路で同監督が審判団に暴言、暴行を働いた事件は21日、セ・リーグから同監督へ厳重戒告と制裁金100万円の裁定が下された。処分は受け入れた星野監督だが、「巨人寄りの判定など絶対にない」とする連盟側の考えには断固反論。川島広守会長(74)に直接会い、公開の場で現場の不満を訴えることも辞さないと断言した。この日の試合は、山本昌の力投と打線の爆発で快勝。首位巨人との差を「3」と戻し、辛うじて優勝戦線に踏みとどまった。

 星野監督は真剣だった。午後4時30分、連盟から厳重戒告と制裁金100万円の処分を通告された同監督は、東京ドームの三塁側ベンチ中央に腰をおろして反論会見を行った。「こっちの言い分は何も聴いてないじゃないか。確かに(暴言、暴行は)オレが悪かったかもしれんが、お互いに話をしてジャッジする問題。それもみんなの前でやればいいんだ」。不承不承ながらペナルティーは受け入れた。だが連盟サイドが片方の話だけを聴いて、一方的に問題を収めようとしている姿勢が許せない。「臭いものにフタをし過ぎなんだ。オレはいくらでも時間を割く。オレにペナルティーを科す意味でも、何回も(連盟事務所に)足を通わせたらいいじゃないか」と、直訴-公開論争を挑む考えを明らかにした。

 この日午後1時すぎから東京・銀座の連盟事務所では、川島会長、渋沢事務局長、当日の20日に東京ドームにいた薙野企画部長の3人が緊急会議、2時間を超える議論の末、処分が決まった。セの監督に対しては史上最高額の制裁金を科した理由を川島会長は次のように話した。「試合後、審判を待ち受けての言動はきわめて意図的。また暴言の内容は連盟のみならずプロ野球全体に対する侮辱です」。星野監督が審判団に浴びせた「だれに頼まれた。汚いぞ。公平にやれ」という言葉を重視した。

 さらに川島会長は「審判は普段から公正中立。巨人寄りという批判の声は耳にしていたが、絶対にあり得ないし、できっこない。疑いの目で見れば色がつくし、白も黒く見える。ひがみ、ねたみというものはそういうもの」と、星野監督がいう「巨人寄りの判定」をばっさり切り捨てた。

 これに対して星野監督も真っ向から反論。「これまでそういう論調(審判の判定が巨人寄り)はたくさん出ている。オレは負けない。他球団の監督やコーチも言っているんだ。それなのに改革をしないあなたたち(連盟)が悪い。特に今年は問題になっている。何もこっちに味方しろとは言っていない。巨人だって(審判が巨人寄りと)言われれば迷惑だろう。何か考えないといけないのと違うか」。連盟に対する反論を、問題提起のためとした。

 一方、球団も星野監督を全面的にバックアップしていく意向だ。審判に対する現場の不満や判定のあり方について、伊藤球団代表は連盟に公開質問状を出す用意があることを言明した。早急に福田一軍総務や児玉球団代表補佐に質問状の中身の検討を命じることになった。「連盟から返答がもらえれば、みなさんにも明らかにします」と伊藤代表は話す。

 連盟サイドが「公開論争」を受ける可能性は低いが、この問題がシーズンオフに尾を引くことだけは間違いない。

◆星野監督暴言暴行事件

 20日、東京ドームで行われた巨人戦で中日は延長10回サヨナラ負け。試合後星野監督は三塁側通路で審判団を待ち受け、微妙な判定を下した上本審判員を「アホウ。だれに頼まれた。汚いぞ。公平にやれ」と罵倒(ばとう)。止めに入った田中審判員の足を2度蹴り、田中審判員が「なんだこの野郎」と大声をあげるなど、約3分間の小競り合いとなった。

※記録と表記は当時のもの