プレーバック日刊スポーツ! 過去の12月5日付紙面を振り返ります。1999年は、当時オリックスのイチローの結婚式を3面で報じました。

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 【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)3日(日本時間4日)】オリックス・イチロー外野手(26)と元TBSアナウンサーの福島弓子さん(33)が、ロサンゼルス郊外の名門ゴルフ場リビエラ・カントリークラブで結婚式を挙げた。両家の親族など参列者16人とごく内輪だけの挙式は、部外者は完全シャットアウトで、地元ロサンゼルス市警も出動するほどの厳戒態勢の中、行われた。2人とも報道陣の前には一切姿を見せず、日本時間きょう5日の帰国後、報告を兼ねた会見でお披露目を行う。

 ロサンゼルス近郊でも有数の閑静な高級住宅街。イチローと弓子さんが選んだ式場は、その中にたたずむ名門ゴルフ場だった。親兄弟や親しい知人ら、列席者16人の挙式。すべて極秘で進んだ晴れの式は、スポットライトを浴び続けた2人の職場とは対照的に、静かなムードで行われた。

 午後0時30分から始まった式には、イチローが茶色のスーツ、弓子さんは純白ウエディング姿で臨んだ。指輪交換後には、2人とも英語で結婚の宣誓。「私、イチローは弓子を妻として愛し続けることを誓います」。サンフェルナンドバレー・メソジスト教会のスチュワート牧師の前で夫婦になったことを明言した。その後、2人は熱いキスを交わし、式は約30分間で終了した。

 同牧師が「イチローはハンサムだし、ユミコはプリンセスのようだった。彼らはお互いにとても愛し合っているし、すごく感動的だった。英語? グッド」と、うらやむほどだった。式後は、そのまま列席者で昼食会。ごく内輪だけの結婚式らしく、ほのぼのとした、温かいムードだった。

 もっとも式場外は慌ただしい限りだった。早朝から続々と報道陣が詰めかけ、アッという間に30人が陣取った。そのためゴルフ場の監視員が駆けつけ、敷地の境界線にロープを張り始めた。午前9時40分。黒塗りのリムジンが到着したものの、カメラの列を発見した途端、1度停止。クルリと方向を変えて裏口へ向かった。さらに、その後はロサンゼルス市警のパトカー2台が出動。制服警官3人が路上の整理を行うなど、ものものしいムードさえ漂った。

 混乱を避けるためか、結局、イチロー、弓子さんだけでなく、両親らは1度も報道陣の前に姿を見せずじまい。日本でオリックス球団がイチローのコメントを発表したが、最後まで極秘のまま、式を終えた。2人はきょう5日に帰国。喜びの肉声とツーショットは、それまでお預けとなった。

 ◆ニールがヒント?

 イチローの「ゴルフ場婚」は、チームメートのトロイ・ニール内野手(34)に影響を受けた? ニールは今季前半最終戦(7月22日)ダイエー戦の直前に、本拠地グリーンスタジアム神戸で球場結婚式を開いた。外国人牧師、聖歌隊をそろえた本格的な神前婚で、誓いのキスを周囲が照れるほどのアツアツムードでこなした。ユニホーム姿で「参列」したイチローは「ああいうのは外国人でないとね。なかなか日本人にはできないことです。感激しました」と、話していたものだった。

 ◆取材ヘリも飛んだ

突然の結婚騒動に地元住民も興味津々だった。高級住宅街に日本の報道陣が多数詰めかけたため、行き交う人々が「何があったのか」と逆取材するほど。敷地内は立ち入り禁止のため、ある日本の民放テレビ局はヘリコプターをチャーターし2人の姿を確認しようと上空からの撮影に挑戦するなど、周囲は終始慌ただしいムードだった。

 ◆リビエラ・カントリークラブ

 ロサンゼルス郊外のパシフィック・パリサデスにある名門のプライベートクラブで、全長7016ヤード、パー71の難コース。全米ベスト20に入るといわれる美しいコースで、1948年全米オープンを開催。その後も全米プロのほか、ロサンゼルスオープン(現ニッサンオープン)の開催地として知られる。敷地内にチャペルはないが、ホールなどをアレンジして挙式を行うことが可能。米国では、ゴルフ場ウエディングは比較的多く、ビッグカップルが利用したことで、今後は日本でも流行する可能性は十分ありそうだ。

※記録と表記は当時のもの