エースへの道を歩み始めた。西武菊池雄星投手(25)が、日本ハム打線を1回先頭打者の1安打のみに封じ、今季初完投での2勝目を完封で飾った。完封勝利は13年以来4年ぶり。12三振を奪う力投でリズムをつくり、打線も11安打で9得点。投手陣の柱として期待され続けてきた8年目左腕が、会心の投球でチームを快勝に導いた。

 力を振り絞り、思い切り腕を振った。完封がかかった9回。菊池は150キロ台の直球に、カーブを織り交ぜ3人で切り捨てた。最後の打者を打ち取ると、グラブをひとたたき。「めっちゃ気持ちいいです。完封と完投はえらい違い。疲れはありましたが、9回にもう1回ギアを上げられるところを首脳陣にも見てもらいたかった。気合を入れて投げました」と汗を拭った。

 有言実行の144球だった。試合前のミーティングで「完投します」と宣言。6回を投げ終えた後、土肥投手コーチから続投を問われると「引くに引けない。行くしかない」と覚悟を固めた。志願のラスト3イニングを無失点。結果で成長を示した。

 決意を胸に秘め、マウンドに立つ。先発陣の柱だった岸がFAで楽天に移籍。周囲からは新エースと呼ばれるが、本人は冷静に足元を見つめる。

 菊池 エースがどういうものなのか、正直まだ分からない。ただ、カード頭を任されている意味をしっかり考えないといけない。チームの勝ちにつながる投球ができるか。それしか、自分の仕事はない。その積み重ねから、エースというものが分かってくるかも知れません。

 ここまで味方が得点した直後の失点が続いていたが、この試合は全てゼロに封じた。8回にはルーキー源田の失策から無死二塁のピンチを迎えたが「いつも助けてもらっている。きっちり抑えないといけない」ときっちり後続を断った。

 許した安打は初回の先頭打者のみの完封に「最初に打たれてよかった部分もあったかと思う。でも4年ぶりは、恥ずかしい。もっと増やさないと」と引き締めた。菊池にとっては、まだエースの投球ではない。「9点も援護をもらえた。1、2点差の苦しい展開でも、この投球が出来るか。そこが次のステップ。まだまだです」。ここからが勝負。チームを勝利に導くためだけに、腕を振り続ける。【佐竹実】

 ▼菊池が1安打完封勝ち。菊池の完封は13年6月12日中日戦以来4年ぶりで、この試合も1安打完封(9回1死から大島の1安打)だった。菊池がこの日許した1安打は、初回先頭打者の西川に打たれたもの。初回先頭打者に打たれた1安打だけで、その後27アウト取って完封勝ちは98年4月3日川村(横浜)が阪神戦で記録して以来12人目の快挙だ。また現役投手で2度の1安打完封勝利は、松坂(当時西武=99、03年)沢村(巨人=11、12年)金子(オリックス=13、14年)岸(当時西武=10、16年)に次いで5人目だ。