世界よ、これが「NORIMOTO」だ。楽天則本昂大投手(26)がDeNA3回戦(Koboパーク宮城)で8戦連続2桁奪三振の大リーグタイ記録に並んだ。メジャーでは、99年のペドロ・マルティネス(レッドソックス)ら2人しか達成していない。9回12個の三振を奪い、7安打2失点と完投。自身7連勝で8勝目をマークし、チームの連敗を3で止めた。

 ガタン、ゴトン。約10年前、則本は揺られていた。滋賀・八幡商へ向かう通学電車の中だ。ふと車窓を見つめた。目的地が近づくと、小学校の社会科見学で訪れた安土城跡が見えてくる。「信長、好きですね。もともと愛知の人だけど、滋賀に安土城を造って。新しい制度やモノを作ることは、自分にないもの」と戦国大名・織田信長が天下布武を果たした場所を眺めた。群雄割拠の戦国時代を勝ち抜いた男を、幼き頃から心の片隅に感じ続けてきた。

 時は現代、17年6月8日、奥羽・宮城に移る。則本は戦場にいた。前夜から降っていた雨は、試合開始直前にやんだ。澄み切った夕刻の空、ファンが陣取る左翼後方には虹のアーチがかかった。真っさらなマウンドにしゃがみ、足元にあるロジンバッグを2度、3度たたいた。「頑張って勝てるように」と決戦へ向けて空につぶやいた。

 狙う首は敵の大将・筒香。8回1死二塁、あと1つ奪えば10三振の場面で、4度目の対戦となった。観客の悲鳴が響き、空には満月が顔をのぞかせた。「異様な雰囲気でしたね」。カウント1-2からの4球目、嶋の外角直球に首を振った。「相手も迷う」。次のサインにうなずき、息を2度吐いた。「3打席とも変化球を打たれていた。直球で行こうとしていた中、内角に投げきれたことが大きい」と日本一の打者の胸元へ149キロ直球。筒香が天を仰ぐほどギリギリのコースで、8戦連続2桁奪三振を記録した。