お待たせ!! 楽天安楽智大投手(20)が、ソフトバンク9回戦(Koboパーク宮城)で、5回8安打3失点と粘り、今季初勝利を手にした。開幕ローテ入りを当確させていたが、右大腿(だいたい)二頭筋部分損傷で離脱。復帰3戦目にして、ようやく白星を挙げた。0・5ゲーム差だった2位ソフトバンクとの直接対決を制し、首位の座をガッチリ死守した。

 バックスクリーンへ伸びる打球を見て安楽は「成長できるのか、ここまでか」と自問自答を繰り返した。3点リードの5回1死一塁から柳田に1点差に詰め寄られる2ランを浴びた直後だ。次打者デスパイネには四球を与えた。「またか」と心の中で自分を責めた。大量に噴き出た額の汗を拭った。大きく息を吸い込み、リセットした。「ここで終わらせる」。長谷川勇を高めフォークで空振り三振、最後は松田を外角スライダーで空振り三振に仕留めた。思わず「ウォッシャー」と声があふれ出た。

 前回登板の姿がフラッシュバックしていた。6月23日の日本ハム戦は、4回2/3を4失点で降板した。「あと1アウト。本当に悔しかった」。5回は何としてもクリアしたい壁だった。復帰戦の同14日ヤクルト戦では、6回3失点で負け投手となった。2連敗で迎えた3戦目、ようやく1勝目をつかんだ。気持ちがあふれ出ることも自然のことだった。

 あの日のことも脳裏にあった。開幕1週間前、練習中に右大腿二頭筋部分を損傷した。3月23日、都内の病院で診察を受けた。全治は6~8週間。オープン戦2試合で1勝1敗、防御率2・45と安定した成績を残し、開幕ローテ入りを当確としていた。そんな矢先で、離脱を余儀なくされた。落胆するまま、仙台に戻った。駅からタクシーに乗り込むと、運転手から「今年は楽しみですね。安楽さん好調ですね」と言われた。何も返す言葉がなかった。186センチ、90キロ近くの背中は、小さくなった。寮までの約40分間が、長く感じた。

 3カ月の月日を経て「ヒーローインタビューに呼ばれる投球ではないけど。何とか1勝出来た。流れをつかめたら」と少しだけホッとした表情を浮かべた。だが、梨田監督からは「最低でも6回は投げないと。完投するくらいのものがないとね。今ごろ初勝利ではいけない」と、あえて厳しい要求を出された。皆の期待は分かっている。ここから、安楽のシーズンが始まる。【栗田尚樹】