西武菊池は、悔し涙を必死にこらえた。「勝ちたかったですね…」。28日に急逝した森投手コーチの追悼試合。マレーロに2発を浴び、7回3失点で弔いの白星を届けられなかった。

 立ち上がりから、喪章をつけた左腕を全力で振った。「いろいろなことを思い出して。今日は絶対にいいところを見せたいと思って投げていたので」。初回から150キロ台を連発。制球に苦しみながらも力で押した。自身ワーストの11安打を浴びながら、許した得点は本塁打のみ。必死に粘ったが「先に点を与えてしまいましたし、(本塁打された球は)甘かったと思います」と唇をかみしめた。

 「兄貴のような存在」だった森コーチの突然の悲報。悲しみを胸にしまい込み、チームの勝利だけを目指した。技術面の助言だけでなく、数々の言葉で救われてきた。「打たれた時は『自信を持って投げろ』と。『お前の球はすごいぞ』と勇気づけてもらった時もある。多くのことを教えてもらいました」と感謝する。

 この日はかなわなかった白星での恩返し。シーズンはまだ続く。「勝ち続けることが一番。そこだけだと思います」と引き締めた。今季初めての2連敗。この壁をいかに乗り越えるか。その姿を天国の森コーチも楽しみにしているに違いない。【佐竹実】