かわいい後輩に、今季1勝を! 楽天の守護神・松井裕樹投手(21)が9回を無失点で締め、安楽智大投手(20)に今季1勝をもたらした。首位攻防3連戦の初戦という大舞台で、安楽は5回3失点。6回から高梨-福山-ハーマンが無失点でつないだ。首位の底力を見せつける勝ちっぷりで、ソフトバンクとのゲーム差を1・5に広げた。

 1点差の9回、2死一塁。1発を許せば逆転の場面で、好打者の内川が代打に送られても、松井裕は落ち着いていた。「内川さんが来ると思っていた。最悪歩かせてもいいと、焦らずに投げられた」。カウント1-2からファウルで2球粘られても、最後は冷静にチェンジアップを投じ、右飛に打ち取った。ソフトバンク・サファテを突き放し、リーグ単独トップの23セーブ目にも、松井裕は「やっぱり、勝ったことが一番」と、自身の記録よりも、ただただ勝利を喜んだ。

 かわいい後輩に、今季1勝をプレゼントしたい一心だった。先発安楽が、今季ホーム初登板で5回3失点。今季初勝利の権利を得てマウンドを降り、中継ぎ陣も8回まで無失点で継投した。松井裕は「安楽は(1軍では)唯一の後輩。いつも一緒にいるんで」。1歳年下の安楽にウイニングボールを届けることに全身全霊を注いだ。

 安楽とは、プライベートでも頻繁に食事に出掛ける間柄。その後輩が、開幕直前に右足の大腿(だいたい)二頭筋部分損傷。リハビリ期間中には、寮の安楽の部屋まで行き「待ってるぞ」と声をかけるなど、“兄貴”として気遣い続けた。6月に1軍に復帰しても、2戦2敗と白星に届かない…。勝てない投手の心理は、痛いほど感じていた。試合後は「安楽も悩んでいた。勝つことで反省もできる。何かを感じ取ってほしい」と、共同作業で手にした勝利に、思わず頬がゆるんだ。

 ソフトバンクとの首位攻防戦3連戦のアタマを制し、ゲーム差は1・5。8連敗中だった金曜日のジンクスも断ち切った。梨田監督は「初戦を取れたのは大きい。明日(1日)の弾みとなる」と、満足そう。貯金も13年以来の23。首位の底力を見せ続ける。【田口元義】