パーム解禁! 広島一岡竜司投手(26)が9回の1イニングを3者凡退に抑え、連続無失点を13試合に伸ばした。2死から4番阿部に公式戦で初めて新球パームを試投。低めに外れるも、その後の配球を生かす効果的な球種となった。中継ぎ陣が再編される中、状況問わず仕事をこなす右腕は、自信とともに新たな武器を手にした。敗戦の中で、キラリと光る投球だった。

 球が揺れた。3点ビハインドの9回に登板した一岡は、巨人の中軸相手に攻めの投球を貫いた。1死からこの日3安打の坂本勇をフォークで遊ゴロに打ち取ると、4番阿部の初球には、新球パームを公式戦で初めて投じた。低めに外れるも、手応えが表情ににじんだ。「ボールになったけど、あれでストレートが生きた。強打者(阿部)の初球にも投げられた。競った展開でも使えるようになれば」。連続無失点を13試合に伸ばした以上に、収穫がある3者凡退だった。

 13年まで在籍していた巨人はもう気にならない。「知らない選手も増えてきた」と、巨人での年月の倍となる4年目を過ごす広島の選手という自覚が強い。

 チームにとっても、欠かせない存在だ。ジャクソンがフォームを崩す中、中田とともに7回を任される候補の1人。今はまだリードした展開だけでなく、この日のようなビハインドでも登板機会が巡ってくる。「便利屋」という立場にも「いろんなところで投げさせてもらって成長できている」と意気に感じている。今季登板数はすでに26試合。自己最多38試合の13年を上回るペースだ。

 昨季開幕前に痛めた「右浅指屈筋損傷」とは今も付き合っている。症状悪化を防ぐため、日常生活から極力右手を使わない。蛇口をひねるのも、ペットボトルのふたを開けるのも、利き手ではない左手を使ってきた。最近では「左も右と変わらないくらい器用に使えるようになりましたよ」と笑う。前向きな性格が成長を後押しする。

 打線は巨人田口の前に4安打に抑えられ、5月7日阪神戦以来5度目の完封負けを喫したが、正面を突いた不運な当たりもあった。次に引きずる敗戦ではない。緒方監督も「何とか1点1点、うちらしい野球をしていきたい」と前を向いた。広島野球を支える投手陣にあって、一岡の存在感は日に日に高まっている。【前原淳】