広島新井貴浩内野手(40)が決勝の適時二塁打を放った。同点の8回1死一塁から初球攻撃。直球を右中間に運んだ。通算の出場試合を2284試合とし、幼い頃から憧れていた広島のOB山本浩二氏(70=野球評論家)に並んだ。チームも今季最多の14得点で快勝した。

 バットを両手で一塁側に投げた。新井は出場通算2284試合目も、全力だ。そして何より勝負強い。同点の8回1死一塁から、阪神マテオの低め直球をジャストミート。鋭いライナーを右中間に飛ばした。決勝の適時二塁打にベンチは総立ちだ。悠々到達した二塁上。仲間の喜びを確認すると、新井は何度も何度も手をたたいた。

 「どんどん振っていこうと思った。みんなすごく喜んでくれた。勝てたことがうれしい」

 6回にも同点に追いつく犠飛を放つなど、ここ一番で大仕事をした。たくましい背中は、新井自身が少年時代に見た「ミスター赤ヘル」の姿そのものだった。幼い頃からの広島ファンで、旧広島市民球場に足しげく通った。「浩二さんが4番で。勝負強くてね」。試合を決める4番打者に胸を躍らせ、大きな本塁打に憧れた。そんな背番号8に、肩を並べた。

 「6番一塁」でスタメンに名を連ね、通算2284試合目の出場。レジェンド山本浩二氏(野球評論家)に並ぶ、プロ野球歴代15位となった。新井は「それはピントこないな。長くやらせてもらっているから。サポートしてくれた周りの方、ファンの方に感謝したい」と言った。節目の記録を迎えると、決まって感謝を口にする。憧れていた山本氏はプロに入って、感謝する人に変わった。

 03年に新井を4番に据えたのが当時の山本監督だった。「浩二さんにはお世話になったし、迷惑を掛けた」と新井。4番の重圧を知るからこそ、厳しかった。結果が出ず、4番降格を告げられた監督室で涙を流したこともあった。そして昨年、2000安打を達成し、名球会のブレザーを着せてくれたのも、山本氏だった。憧れていた勝負強さを身につけ、レジェンドに肩を並べた。チームも快勝。貯金を今季最多の24まで伸ばした。「苦しいときに安打を打ちたいと思っている」。新井さんに支えられ、チームはまた一丸になる。【池本泰尚】