西武が波に乗ってきた。2年目の多和田真三郎投手(24)が武器のスライダーを駆使し、7回5安打無失点の力投。3勝目を挙げ、チームを13年以来、4年ぶりの8連勝に導いた。21日から着用する赤が基調の「炎獅子(えんじし)ユニホーム」は、ここまで負け知らず。この勢いで、赤い獅子が楽天&ソフトバンクの2強に割って入る。

 かつてのもろ刃の剣ではなかった。1点リードの5回1死二、三塁。多和田は田村を遊ゴロ、サントスを二ゴロに仕留めた。ともにフルカウントから投じた勝負球はスライダーだった。前回22日の日本ハム戦は制球に苦しんだ球種。「同じ失敗は繰り返せないと、この1週間取り組んできた。ブルペンから調子がよくて、いけるなと思いました」と力強くうなずいた。

 最大の武器の制御に苦心してきた。鋭い曲がりが長所の半面、コントロール出来なければ明らかなボール球になる。いかに打者での手元近くで曲げられるかが生命線。リリースポイントを安定させるため、昨季後半から股割りした状態からのシャドー投球に取り組んできた。強化された下半身と正確な体重移動が「スライダーを思ったところに投げられた」という好投を引き出した。

 105球中、直球とスライダーが99球。4月下旬の2軍降格中に習得した130キロ台、120キロ台と球速と曲がり具合の異なる2種類のスライダーも効果を発揮した。この残像が「体的に本当にきつくて、一番のポイントだった」という6回2死一、二塁で生きた。中村をこの日6球目のフォークで、空振り三振に切った。

 辻監督も「苦しい場面もあったけど、ナイスピッチングだった。スライダーが曲がりすぎて当たった死球もあったけどね」と目を細めた力投。7月を3戦3勝で締めた多和田は「前半戦はチームの力になれなかった。ここから大事な試合が続くので粘り強く、勝利に貢献出来るように、精いっぱい投げたい」と誓った。

 故郷の沖縄・中頭郡中城村の小学校のグラウンドで初めて投げた変化球がスライダー。高校、大学時代の武器は直球だったが、プロで新たな相棒を手にした。楽天、ソフトバンクに待ったをかけるには、この男の力が不可欠になる。【佐竹実】