ようやく待ち人が、帰ってきた。1点を追う9回2死一、二塁から逆転のホームを踏んだのは、右肘骨挫傷で戦線離脱していた楽天茂木栄五郎内野手(23)だった。聖沢諒外野手(31)の放った左中間への2点適時二塁打で試合を決めた。主軸の復帰が起爆剤となり、チームは連敗を「3」でストップ。7月最後のゲームを白星で終えた。

 背番号「5」が、軽やかな足取りで三塁を蹴った。弾むようにステップし、一塁走者の茂木が笑顔で生還した。首筋や顔は、こんがりと日焼けしている。75キロあった体重も気付けば、2キロ減った。2軍での苦しかった時間を物語っている。6月17日阪神戦(甲子園)で、右肘骨挫傷を負った。それ以来の1軍の舞台だった。梨田監督も「何というか、待ち人来たというかね、やっと帰ってきた」と待ち望んだ男が、9回に逆転のホームを踏んだ。

 絶体絶命のピンチから、ミラクルが起きた。9回表が始まる時点で、1点を追う展開だった。さらに簡単に2死と追い込まれた。だが、ベンチには重い空気など流れてなかった。連続四球でチャンスは拡大。一、二塁から聖沢の放った打球は左中間を真っ二つに割いた。「打てなかったから終わりではなく、打ったらヒーローと思って。ピンチをチャンスに変えて」。狙いどおりの直球をはじき返し、試合を決めた。

 「1番・茂木」が、戻ってきた。患部はまだ万全ではないため、指名打者での出場。その中で、3打数1安打1得点と2個の四球を選ぶなど、3度出塁した。それでも「自分としては、まだまだ。振り遅れている。僕が1番に入るということは、出塁と長打を期待されている。これからです」と課題を口にした。その胸の内は、申し訳なさでいっぱいだった。

 茂木 僕から始まった負の連鎖。その中でチームが勝っていた。早くその人たちと、一緒に1軍で戦いたいと思っていた。

 茂木の離脱を始め、24日のオリックス戦ではペゲーロと岡島が負傷し、戦線を離れた。守護神・松井裕も故障で、2軍リハビリ中。立ち込める不穏な空気に、茂木は責任感を強くした。「本当にチームが勝てて良かった」とホッとした表情を浮かべた。代名詞でもある豪快なフルスイングで、遅れを取り戻すだけだ。【栗田尚樹】